2020年6月18日木曜日

    2020/06/18
       
      暑い日にはエアコンを~熱中症対策を忘れずに

   空を見上げて
          猛暑日増加 母の説得にも「熱」

 
  青森県出身の気象予報士、奈良岡希実子です。このコラムを担当することになりました。天気にまつわる私の日常を、つれづれなるままに綴っていきたいと思っています。よろしくお願いします。
 今年の夏至は今月21日。1年の中で太陽が最も高い所から照り付ける日です。余談ですが、私の誕生日でもあります。日ごとに力強さを増していく日差しに伴って、ある不安が募ります。青森に住む両親は、今年の夏も熱中症にならずに過ごせだろうか―何を隠そう私の実家には今もエアコンがないのです。青森のエアコンの普及率は全国で下から2番目。冷房がないのは、私の実家に限ったことではないのでしょう。実家にいた頃は特に疑間を感じず、風通しのいい場所でアイスばかり食べていました。
 しかし、最近は青森でも最高気温が35度以上になる猛暑日が増えています。
青森の場合、1980年代は2日、90年代は3日、2000年代は0日ですが、10年代になると7日も観測されています。東京は80年代に9日でしたが、2010年代には、なんと80日にもなりました。全国では40度という気温も珍しくなくなっています。
 熱中症で亡くなる人も増えています。最近は毎年500人以上が亡くなっていて、1年は1000人以上も亡くなりました。これほど多くの命を奪う気象災害はなかなかありません。特に高齢者は暑さを感じにくいため、より熱中症に注意が必要です。増える猛暑日に、年を取ってきた両親、冷房がない実家。不安は募ります。
 毎年、エアコンを買おうと呼びかけるのですが、母はかたくなに、「必要ない」と言い張ります。私も真夏に無理して帰省したくないなという気持ちもあります。6年ほど前に帰省した時は、暑くてビールの量が増えました。父は、暑さを警戒して購入を検討しているようですが、母の反対を押し切るほどの熱はありません。こうして、夏が来るたびに、母との間で「エアコンを買う買わない論争」が繰り広げられます。
ちなみに、母はエアコン嫌いなわけではありません。東京の私の部屋に来ると、冷房の風が一番よく当たる場所で「涼しくて最高! 」と言って動かないのですから、どちらかというと冷房大好き人間です。必要ない理由は、「耐えられないほどの暑さは1年のうちにそれほど多くない」。しかし、その数少ない日が取り返しのつかない1日になってしまう可能性があり、そのリスクの高い日が増加傾向にあるとなると、娘としては心配です。
 今夏の気温は全国的に高い予想です。しかも新型コロナウイルスの影響でマスクが手放せません。マスクを着けると体の熱が放出されにくく、体内温度が上昇するそうです。
 水分をこまめにとるなどの対策はもちろん、室内の温度や湿度が高くなりすぎるのを防ぐ必要があります。睡眠不足や二日酔いなど体調不良の場合も熱中症になりやすいで、体調管理も大切です。耐え難い暑さによって命を奪われてしまう現実を見ると、母の説得に力が入ります。
 みなさんもしっかり対策をして元気に乗り切ってください
                          
  青森県出身の気象予報士、奈良岡希実子です。このコラムを担当することになりました。天気にまつわる私の日常を、つれづれなるままに綴っていきたいと思っています。よろしくお願いします。

                            読売新聞 6/15より