2020年11月19日木曜日

 

読売新聞オンライン

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  詩人の谷川俊太郎さんは「生長」という詩の出だしで、小さな子供が感じる過去の時間をこう記している。<三才/私に過去はなかった/五才/私の過去は昨日まで>◆誰しも大人になれば過去の時間はずっと延びる。そこそこ長い時のようにとらえてきたのだが、感覚を狂わされる思いがした。きのうの速報に飛び交った「過去」は1年とたっていない◆東京で、神奈川で、埼玉で…新型ウイルスの1日あたりの感染者が各地で過去最多となった。全国の集計値も初めて2000人台に達し、“冬コロナ”がいよいよ勢いを増してきた◆年末年始が近づく。忘年会にクリスマス会、小旅行や帰省…思い描く近々の未来を、立ち止まって考え直す人は多いにちがいない。怖いのは感染の波がどこまで高くなるか分からないことだろう。お年寄りや持病のある方は、細心の注意を払ってウイルスが好むという寒い乾燥の季節を乗り切っていただきたい◆きのうはもう一つ、過去最多を告げる悲痛な報に接した。児童相談所が対応した虐待件数が昨年度、19万を超えたという。つらい過去の時間を抱く子供がこんなにも。

2020/11/19/12:51

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