10月10日 よみうり寸評
『五木の子守唄』は赤ん坊を寝かしつけるための歌ではない。貧しい家庭から子守奉公に出された少女たちが不遇を嘆く歌詞が並ぶ◆〈おどんがお父っつあんは あん山おらす おらすともえば いこごたる〉。私のお父さんは遠くに見えるあの山にいるんだと思うと、早く帰りたくなる。そんな郷愁にかられたのだろう◆山村の悲哀が歌い継がれた熊本県五木村の村民たちも住み慣れた地を離れざるを得ない不遇をかこってきた。たび重なる球磨川の洪水で、1966年に村を流れる支流の川辺川でダムが計画された。水没予定地の500世帯が移転し、このうち7割は村を去ったが、11年前に計画は中止になった。ダムに