2020年7月1日水曜日


医療ルネサンス

新型コロナと持病<1>生活習慣 変える機会に


新型コロナと持病<1>生活習慣 変える機会に
 
 横浜市の会社員男性(62)は毎年、秋から春にかけて月1、2回、北アルプスなどに登山に出かける。
 「朝露でぬれた草木が朝日に照らされて黄金色に光る景色は、秋でないと見られない。冬山は、雪で白い景色が広がり、神々しい」
 テントを持って尾根を縦走し、景色を独り占めにする。時には通る道が増水して川になっていたり、猛吹雪で前に進めなくなったりすることもあるが、「現地で一緒になった人と助け合って登るのも魅力」と男性。冬には山の斜面などでスノーボードも楽しむ。
 男性は8年ほど前から糖尿病を患う。登山などで体を動かしていることもあり、過去1~2か月の血糖状態を示すヘモグロビンA1c(HbA1c)は、昨年春ごろは7%未満だった。
 だが、今年1月は7%、国内で新型コロナウイルスの感染者が増え始めた3月は7・3%に上がった。「年が明けてから山に行けず、運動不足になっていたかもしれません」と振り返る。
 近くの松澤内科・糖尿病クリニック(横浜市)に行くと、院長でかかりつけ医の松澤陽子さんに「運動をしましょう」と促された。休日に長めに散歩をするなど、意識的に体を動かすようにした。
 コロナ禍でも出社を求められたが、自宅で食事を取る機会が増えた。料理が得意で、アクアパッツァや温野菜、ローストビーフなどを家族にふるまった。「外での飲み会がなくなり、食事は健康的に。家族でゆっくり食事を楽しむこともできました」。5月のHbA1cは6・8%。昨年の同時期と同じ数値に戻った。
 松澤さんによると、新型ウイルスの流行で自宅で過ごす時間が長くなり、食事や酒の量が増えたり、買い置きしたインスタント食品に手が伸びてしまったりした患者が目立つという。
 一方、外食の機会が減り、自宅で早い時間に夕食を食べるようになるなど、生活スタイルに良い変化がみられた人もいた。松澤さんは「寝る前に食べると血糖値が下がりにくく、体重増加にもつながります。自粛生活をマイナスととらえず、生活習慣を変える良い機会と考えてほしい」と話す。
 感染を恐れてクリニックを受診せず、治療を中断してしまった患者もいた。松澤さんは「定期的に受診をし、不安なことがあれば、一人で悩まず、かかりつけ医に相談してほしい」と呼びかける。
 生活習慣病などの持病がある人が新型ウイルスに感染すると、重症化しやすいといわれる。感染拡大の「第2波」に備え、どのように生活していけばよいのかを考える。
 (このシリーズは全4回)
療・健康・介護のニュース・解説

コロナ感染は自業自得」日本は11%、

   米英の10倍…阪大教授など調査

  • 「コロナ感染は自業自得」日本は11%、米英の10倍…阪大教授など調査
  • 新型コロナウイルスに感染するのは本人が悪い――。3~4月の時点で、そう考えていた人の割合が、日本は米国や英国などと比べて高かったという調査結果を、三浦麻子・大阪大教授ら心理学者の研究グループがまとめた。国内で感染者が非難されたり、差別されたりしたことと、こうした意識が関係している可能性があるとしている。
 三浦教授らのグループが3~4月、日本、米国、英国、イタリア、中国の5か国で各約400~500人を対象にインターネット経由で回答を得た。
 「感染する人は自業自得だと思うか」との質問に、「全く思わない」から「非常に思う」まで賛否の程度を6段階で尋ねた。
 その結果、「どちらかといえばそう思う」「やや――」「非常に――」の三つの答えのいずれかを選んだのは、米国1%、英国1・49%、イタリア2・51%、中国4・83%だった。これに対し、日本は11・5%で最も高かった。反対に「全く思わない」と答えた人は、他の4か国は60~70%台だったが、日本は29・25%だった。
 三浦教授は「日本ではコロナに限らず、本来なら『被害者』のはずの人が過剰に責められる傾向が強い。通り魔被害に遭った女性が、『深夜に出歩くほうが悪い』などと責められることもある。こうした意識が、感染は本人の責任とみなす考えにつながっている可能性がある」としている。