流量は信濃川の800倍、「大気の川」熊本豪雨時に発生
熊本県の球磨 川が氾濫した4日、日本上空には大量の水蒸気が帯状に流れ込む「大気の川」と呼ばれる現象が発生していたとする解析結果を、筑波大の釜江陽一助教(気象学)がまとめた。水蒸気を水に換算した推定流量は、日本最大の流量を誇る信濃川の約800倍にも相当し、広域での降雨につながったとみられる。
大気の川は、長さ1500キロ以上の水蒸気帯を指し、雨のもとになる水蒸気を次々と送り込む。2018年の西日本豪雨などでも発生したとされる。
釜江助教は、気象庁提供の水蒸気量や風向などのデータを分析。4日午前3時には西日本~東日本の上空1・5キロ付近に、長さ約3000キロ、幅約600キロ、厚さ約3キロの大気の川が延びていたと推定した。
内部の水蒸気を水に換算して流量を計算したところ、毎秒約40万立方メートルに上ることが判明。信濃川の年平均流量(同約490立方メートル)の約800倍に当たり、西日本豪雨で発生した大気の川の推定流量(同約48万立方メートル)にも迫る規模だった。
今回、九州の西と南の海上から大量の水蒸気が運ばれて大気の川が発生し、国内の広域に及ぶ降雨の原因になったとみられる。特に、最初に流れ込んだ九州では、集中豪雨の形で現れたと考えられるという。
釜江助教は「地球温暖化が進めば、大気の川が巨大化し、頻度も増える恐れがある。豪雨リスクがどれほど高まるのか、さらに調査が必要だ」と話す