2020年7月9日木曜日

© ハフポスト日本版 新たな陽性者数が過去最大の224人に上った東京都。

 小池百合子知事は7月9日夕、臨時の記者会見を開き、クラスターが発生した店に休業協力金を支給する方針を示した。一方で、都内全域への外出自粛や休業要請は現時点で行わないことを改めて強調した。
これまで新規感染者数で最も多かったのは、緊急事態宣言が発令されていた4月17日の206人で、当時のPCR検査数は919件だった。小池知事によると、224人に上った今回の検査数は3400件以上といい、「感染者数の増加は検査数が増えていることも影響しているが、さらなる警戒が必要」と述べた。
新規感染者の年代について「30代以下が占める割合は82%で、若い人に多い。既往症のある人や高齢者に感染させないための工夫が必要と認識している」と述べた。一方で「重症者は6人にとどまり、直近の2週間で死亡例はない。医療体制をしっかり守っていくことが都民の安心につながる」と話した。

■クラスターで休業の店に支援金

総額3132億円の補正予算案についても言及。新型コロナウイルスの患者対応にあたる医療従事者への慰労金、患者が減少して経営に打撃を受けている医療機関への独自の支援金、繁華街の積極的なPCR検査、クラスターが発生した店への休業協力金などの事業を盛り込んだ。
休業協力金は、クラスターが発生した店に対して区市町村から個別に休業要請をして、協力した場合に都が支援金を全額負担する。休業協力金の事業に50億円の予算を計上した。
小池知事は「感染しない、させないことを守りながら新しい日常を送っていただきたい」と強調した。





「変な臭いや音、間一髪で避難」 豪雨の岐阜・下呂 孤立解消作業続く
ようやく孤立が解消したが、民家や車両が土砂で埋まったままの地区=岐阜県下呂市小坂町長瀬で2020年7月9日午後1時45分、川瀬慎一朗撮影

© 毎日新聞 提供 ようやく孤立が解消したが、民家や車両が土砂で埋まったままの地区=岐阜県下呂市小坂町長瀬で2020年7月9日午後1時45分、川瀬慎一朗撮影  

記録的豪雨に見舞われ、一時約4000人が孤立した岐阜県では、9日も雨の中、懸命な復旧作業が続いた。だが、孤立解消の作業は難航、やっと道路が復旧した地区も家や車が土砂に埋まったままだ。梅雨前線はなお停滞し、11日以降も雨が続く見通しで、住民の不安が募っている。
 国道41号が寸断するなど各地で土砂災害が起きた下呂市。小坂(おさか)地区では県道が塞がって9日夜に入っても3集落650人が孤立し、消防団員が自転車道を迂回(うかい)しておにぎりなどの物資を住民の避難先の公民館へ届けた。
秘湯として知られる同市小坂町湯屋の温泉旅館「泉岳館」の若おかみ、熊崎知里さん(36)は「土砂災害はなかったが、食糧は備蓄でやりくりし、停電したので懐中電灯やロウソクの明かりで過ごした。暑い時期で冷蔵庫が使えず困った」と話した。山から濁流が注いだ同市小坂町長瀬では、小坂中学校に一時43世帯97人が避難した。車庫や蔵が土砂にのまれ、義母(90)と避難した女性(60)は「災害が起きた時、生暖かく変な臭いや音がした。間一髪で避難できた。地盤が緩んでいて家を見に行くのも怖い」。庭先に土砂が流入し、床上浸水したという山下貴生さん(51)は「持病があるが病院に行けず、薬をもらえない」とこぼした。
 同市小坂町小坂町では7日夜、増水した川の水が民家を破壊して住宅街に流れ込み、雨の中で撤去作業が続く。書店内の泥を取り除いていた店長、早子雅司さん(61)は「九州の豪雨が大変と思っていたがここでも起きるとは」。小坂町区長の住良太朗さん(68)は「多くの家や店が床下浸水した。人的被害がないことが幸い」と話した。
 全国有数の温泉地、同市中心部の下呂温泉も、8日に一時孤立した。近くの農産物販売店「いろどり市場」には飛驒川の濁流が流れ込み、店内外が泥や流木であふれた。社長の松下哲也さん(41)は「早く元に戻したい。今後も天気がどうなるか分からず不安」と作業を急いだ。温泉街で和菓子などを販売する「ますや観光百貨店」の駒田誠代表社員は「新型コロナウイルスの影響で旅館やホテルが7月から徐々にスタートしたさなかの豪雨。災害で怖いイメージが付くと観光面でマイナスになる」と心配した。
 県などによると9日午後7時現在、下呂、高山両市計6地区の241世帯684人が依然、孤立状態にあるほか、高山市で121戸が断水、同市などで720戸が停電したまま。9日までに、少なくとも民家201棟の床上床下浸水を確認した。同6時半現在でも下呂、郡上両市の1万5659世帯4万1184人に避難指示が出ている。
 国土交通省高山国道事務所によると、国道41号は路面崩壊など6カ所で通行止めとなり、隣接する下呂、高山両市の行き来は大きく迂回する必要がある。担当者は「(道路沿いの)飛驒川の水位が平常に戻ってからの復旧作業になるので、開通には相当の時間がかかる」と話す。国道不通を受け、中日本高速は東海環状自動車道美濃加茂インターチェンジ(IC)―東海北陸道飛驒清見IC区間のみ利用する車を対象に通行料を当面無料にする。
 JR東海は9日も高山線下麻生―猪谷間の上下線で終日運転を見合わせた。一方、愛知県豊田市で土砂が線路内に流入した愛知環状鉄道は9日正午ごろ、全線で運転を再開した。
 名古屋地方気象台によると、降り始めの3日から9日午後5時までの降水量は、下呂市萩原で785ミリ、高山市船山で649・5ミリと、いずれも7月の月間平均降水量を大幅に超えた。引き続き局地的に非常に激しい雨が降る見込みで、同気象台は「地盤が緩んでいるので少しの雨でも土砂災害につながる危険がある。大雨の期間はまだ終わっていない」と注意を呼びかけている。【川瀬慎一朗、黒詰拓也、野村阿悠子】
熊本県多良木町に設けられた避難所で過ごす球磨村の住民ら(9日午前9時41分)=大石健登撮影
© 読売新聞 熊本県多良木町に設けられた避難所で過ごす球磨村の住民ら(9日午前9時41分)=大石健登撮影  
  梅雨前線の影響で、九州各地では9日も激しい雨が降り、被害が拡大した。大分、熊本両県で新たに5人の死亡が発表され、4日からの豪雨による死者は計62人となった。九州全7県で118件の土砂崩れが発生している。熊本、鹿児島両県に大雨特別警報が出て11日で1週間となるが、被害の全容はつかめていない。
 活発な梅雨前線は9日も九州から東海にかけて発達した雨雲をもたらし、西日本から東日本の広い範囲で激しい雨となった。9日午後7時までの1時間雨量は最大で、長崎県諫早市で66ミリ、長崎市で54・5ミリ、宮崎県えびの市で46ミリ、熊本県宇城市で38・5ミリなどを観測した。
 一連の大雨では、9日午後7時現在、熊本県を中心に死者62人、心肺停止1人、行方不明16人の被害が確認されている。ただ、各地で断続的に降る大雨が行方不明者の捜索を阻んでいる。
 身元が公表された死者53人のうち、65歳以上が9割近くを占めた。大分県は9日、同県由布市で行方不明となっていた5人のうち、同市湯布院町湯平の旅館業、渡辺登志美さん(81)が遺体で見つかったと発表した。死因は溺死という。高齢者が避難する難しさも浮き彫りになっている。
 土砂崩れも相次いでいる。国土交通省によると、9日正午までに熊本県で48件、鹿児島県で36件、長崎県で12件などが確認された。
 読売新聞のまとめでは、9日午後8時現在、九州で約23万人に避難指示が出され、約2800人が避難所に身を寄せている。複数の河川の氾濫などにより、九州と山口県では計約1600棟が床上浸水し、計約3900棟に床下浸水の被害が出た。
 梅雨前線は10日も本州に停滞し、九州などが大雨に見舞われる見通し。10日午後6時までの24時間予想雨量は、九州北部で300ミリ、四国で200ミリ、九州南部で150ミリ、東海で130ミリなど。大雨は12日頃まで続く恐れがある。
 気象庁は9日、九州を中心に深刻な被害をもたらした今回の豪雨を「令和2年7月豪雨」と名付けた。同庁が名称を付けた自然災害は、昨年10月の東日本台風(台風19号)以来となる。
東京都 新たに224人の感染確認 過去最多 新型コロナ

東京都 新たに224人の感染確認 過去最多 新型コロナ

東京都の関係者によりますと、9日、都内で新たに224人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたということです。都内で1日に確認される数としては、ことし4月17日の206人を上回り、これまでで最も多くなります。
都内では、8日、感染の確認が7日ぶりに100人を下回りましたが、1日で3桁に戻りました。これで都内で感染が確認されたのは、合わせて7272人になりました。

都は、感染の確認が相次いでいる夜の繁華街では、適切な感染防止策を講じている店を選ぶなど、十分に注意するよう強く呼びかけています。

加藤厚労相「医療提供体制は対応可能」

加藤厚生労働大臣は午後2時すぎ、記者団に対し「まだ東京都から正式な発表がないので、発表をよく聞いてしっかり分析したい。東京都の医療提供体制は、3000床のベッドの確保に向けて準備が進んでいるので、200人を超える水準でも対応できる状況だと思う」と述べました。

また、緊急事態宣言を再び出すかどうかについては、「全体として判断することなので申し上げられないが、東京都の医療提供体制の現状という意味では、直ちにひっ迫する状況にはないと認識している」と述べました。

立民 枝野代表「国も都も手打たず傍観」

立憲民主党の枝野代表は党の会合で、新型コロナウイルスの感染者の確認が相次いでいることについて、「危機感を持つ必要があるが、国も東京都も、事実上、何の手も打たず傍観していると受け止めざるを得ず、大きな責任問題だ」と政府や東京都の対応を批判しました。

そのうえで、「東京でのPCR検査の件数は大幅に増えているという状況ではなく、週に110万件の検査を行っているドイツと比べれば、3つ4つ桁が違う。幅広く検査を行うことで感染拡大を防ぐことが必要だ」と述べ、政府に対し検査の拡充を求める考えを強調しました。

PCR検査受けた人数 増加傾向 「陽性率」も上昇

東京都内でPCR検査を受けた人の数は日によってばらつきがありますが、増加傾向が続いています。

東京都によりますと、緊急事態宣言が解除された5月25日に都内でPCR検査を受けた人は920人でしたが、先月12日には2118人と、初めて2000人を超えました。

今月3日には過去最多の2715人にのぼりました。9日午前の時点でまとまっている最新のものは7日の人数で、1857人となっています。

また、検査を受けた人のうち感染が確認された人の割合「陽性率」も上昇しています。5月中旬以降は1%前後で推移してきましたが、先月に入ると2%前後となり、先月25日に3.1%、今月1日に4%、5日には5%と上昇が続いています。

現時点でまとまっている最新の7日の陽性率は5.8%に達しています。

都内の入院患者数 先月下旬以降 再び増加

東京都内の入院患者の数は、5月に大幅に減少したあと、ほぼ横ばいで推移していましたが先月下旬以降、再び増加し始めています。

都によりますと、今の形で取りまとめを始めた5月12日に1413人だった入院患者は先月20日には204人と最も少なくなりました。

ところが、その後、再び増加し始めていて、8日は444人となっています。これは、5月末頃と同じ水準です。

一方、入院患者のうち、集中治療室や人工呼吸器での管理が必要な重症患者の数については、減少傾向が続いていて、4月末には100人余りだったのが8日は6人になりました。

これに対して、東京都は、新型コロナウイルスの入院患者を受け入れる病床としておよそ3000床を準備しておくことで医療機関と合意できていて、このうちおよそ1000床はすでに患者を受け入れられる状態になっています。

骨太方針案 不安の払拭で経済再生を図れ


 新型コロナウイルスの感染拡大は日本の経済・社会の弱点を浮き彫りにした。着実に克服し、経済を回復軌道に乗せなければならない。
 政府が、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」原案をまとめた。感染症対策と経済活動の両立をテーマに掲げた。
 経済再生には需要喚起が不可欠だ。国民が安心して外出し、消費ができる環境を整えたい。
 不安を取り除く上で要となるのは万全な医療提供体制である。
 第1波では、感染の疑いがあっても速やかにPCR検査が受けられなかった。原案は、検査能力を戦略的に拡充するとしたが、数値目標には踏み込めなかった。
 現在、1日約3万件で他の先進国より少ない。検査にあたる医療従事者を増やし、民間検査会社との連携を急ぐことが重要だ。必要に応じて検査が受けられるという安心感を提供してもらいたい。
 さらに不安軽減への妨げとなったのは、予算執行の遅れだ。
 政府は補正予算で1人10万円の現金給付や中小企業向け持続化給付金制度の創設を決めたが、支給が滞った。素早く届かなければ、支援の実感が得られない。
 個人の銀行口座とマイナンバーがひも付けられておらず、諸外国と比べ、行政手続きのデジタル化の停滞が目立った。
 国と各自治体で情報システムや業務手続きが異なることも混乱を広げた。現金給付のオンライン申請や、感染者に関するデータのやりとりが円滑にできなかった。
 様々な問題点を解決して不安を払拭ふっしょくし、経済の立て直しにつなげることが急務である。
 原案は、政府内に民間の専門家らを集めたデジタル化の新たな司令塔を設けると記した。マイナンバー制度の使い勝手を良くする抜本改革に取り組むという。
 デジタル化の推進は当然だ。使いやすく、国民が恩恵を感じられる仕組みを構築し、執行体制の目詰まりを解消してほしい。
 対面や書面の押印を前提とした慣行の見直しを含め、社会全体の効率化を後押しするべきだ。
 持続化給付金などの民間委託では、事業者の選定や高額な委託費に批判が出た。国民が不信感を抱けば、対策の実効性が低下しよう。透明性の確保が欠かせない。
 九州地方の豪雨など、激甚化する災害も国民の不安感を高めている。原案は、デジタル技術を非常時の危機管理や復旧の迅速化に生かすとした。命を守る施策の強化に努めることが肝要だ。

高山・下呂両市で905世帯2229人孤立


泥をかぶった家財道具を片付ける人たち(8日午後0時18分、岐阜県下呂市で)=佐藤俊和撮影
泥をかぶった家財道具を片付ける人たち(8日午後0時18分、岐阜県下呂市で)=佐藤俊和撮影
 岐阜県高山、下呂両市によると、9日午前8時現在、両市で905世帯2229人が孤立している。午前10時20分現在、11市町で計188棟の床上・床下浸水が確認され、うち飛騨川が氾濫した下呂市では112棟に及んでいる。人的被害は確認されていない。
土砂崩れで足止めされた宿泊客らを乗せて次々と下山するタクシー(9日午前10時20分、長野県松本市で)
土砂崩れで)足止めされた宿泊客らを乗せて次々と下山するタクシー(9日午前10時20分、長野県松本市で
 長野県のまとめでは、9日午前7時半現在、重傷者1人、9市町村で18棟の床下浸水が確認されている。土砂崩れなどが発生した景勝地の上高地につながる国道158号は仮復旧作業が終わり、観光客らの孤立状態が解消した。

7月9日(木)午前11時発表の週間予報© ウェザーマップ 7月9日(木)午前11時発表の週間予報
 9日(木)~10日(金)にかけて前線がゆっくりと北上し、西日本と東日本では10日にかけて再び大雨となるおそれがあります。特に九州や四国では48時間の雨量が多い所で300~400ミリ程度も予想されています。西日本から東日本ではこれまでの記録的な大雨により、少しの雨でも土砂災害などが発生しやすい危険な状況が続いていますので、最新情報をもとに身の安全を第一に行動をするようにしてください。
また、週間予報を見ると、来週前半にかけて雨マークが並び、11日(土)以降も油断できない状況が続く見込みです。さらに、雨が降っても西・東日本では30℃近くまで上がる所が多いでしょう。大雨への警戒とともに不快な蒸し暑さが続きますので、体調管理もできる限り心がけるようにしてください。

衆院本会議に臨む河井克行前法相=国会内で2020年6月17日午後3時、竹内幹撮影
© 毎日新聞 提供 衆院本会議に臨む河井克行前法相=国会内で2020年6月17日午後3時、竹内幹撮影  

 2019年参院選を巡る選挙違反事件は8日、参院議員の河井案里容疑者(46)=広島選挙区=と前法相の夫克行容疑者(57)=衆院広島3区=が公職選挙法違反(買収など)で起訴される事態に発展した。夫妻への批判が高まる一方、辞職した首長らを含む受領側は立件が見送られることになり、混乱渦巻く県政界に厳しい目が向けられそうだ。【池田一生、園部仁史、手呂内朱梨、渕脇直樹】
 「夫妻は何も説明していない。全ての真実を自分の口から説明するのが彼らにできる唯一の誠意だ」。夫妻起訴の報が伝わった8日午後、県議会の中本隆志議長が語気を強めた。
 19年10月に発覚した案里議員の陣営による運動員買収疑惑は、県政界を揺るがす大規模買収事件に進展した。県内では克行議員から現金を受け取ったと認めた安芸太田、三原、安芸高田の3市町長が辞職。県議だけでも十数人に金銭授受があったとされるが、中本議長は「夫妻が関与した特殊な例だ」と述べた。
 この日は湯崎英彦知事も報道陣の取材に応じ「(夫妻には)一票を投じた県民に対して説明責任がある。裁判でしっかりと事実を明らかにしてほしい」と指摘。受領側の地方議員らについても「(現職の国会議員である夫妻との)力関係はあると思うが、有権者の負託を受けて仕事をする立場上、説明は必要と思う」などと語った。
 これに対し、立件が見送られることになった受領側のある県議は「何か言える立場にはないが、検察の判断を尊重し、議員活動は続けさせていただく」と述べた。一方で克行議員から現金を受け取った別の地方議員は「夫妻だけの責任にしていいのかと思うが、これでようやく後援会に説明できる」とし、進退について支持者らと相談する考えを示した。
 市民からは厳しい声が聞かれた。広島市西区の男性会社員(54)は「あの夫妻を私たち県民が選んだと思うと恥ずかしい」と語り、現金を受け取った側の処分には「選挙で金をもらっても、簡単には罪に問われないとの前例ができてしまうのではないか」と疑問を呈した。尾道市栗原町に暮らす自営業の女性(64)は「カネまみれの選挙だったことが判明した。受領側も問題があるはずで『断り切れなかった』との説明には納得できない」と批判した。
銀座の人気和食店「銀座魚勝」の女将、茅島氏。現在は4丁目にあった魚勝を閉め、別の場所で料理人の夫とともに紹介制の和食店「㐂津常(きつね)」を営んでいる(編集部撮影)© 東洋経済オンライン 銀座の人気和食店「銀座魚勝」の女将、茅島氏。現在は4丁目にあった魚勝を閉め、別の場所で料理人の夫とともに紹介制の和食店「㐂津常(きつね)」を営んでいる(編集部撮影)  新型コロナウイルスの脅威で、外出を控える人が増えた結果、悲痛な声を上げているのが、飲食店だ。この事態で、飲食店では何が起こり、店主は何を思ったのか。銀座の真ん中で夫の柳橋克彦料理長とともに大衆割烹店「銀座魚勝」を営んできた女将、茅島ゆう子氏は、「飲食業界はもう二度と元には戻らないのではないか」とまで言い切る。

 5年後「生存率」が20%と言われる飲食店業界、しかも老舗がひしめく銀座で2015年2月から営業してきた同店は「弥左エ門いなり」でもよく知られる人気店。昨年12月にはよりカジュアルに和食を楽しみたい、というニーズを受けて4丁目にあった店舗を立ち飲みスタイルに業態を変更すると同時に、銀座の別の場所に、カウンター13席の紹介制の和食店「㐂津常(きつね)」を開いた。築地出身で、銀座の高級京おばんざい店で修業を積んだ柳橋氏が手がけるのは、オーソドックスだがしっかりだしを取るなどした手の込んだ和食だ。

1月下旬から客足が激減

 「手間暇かけた和食を、普段あまり和食を食べていない若い人や外国人にも楽しんでいただきたい」(茅島氏)というコンセプトの立ち飲み屋と、カウンターで和食を楽しむ㐂津常。開業5年目で新たな挑戦に踏み切った夫婦が“異変“を感じたのは1月末のことである。中国・武漢で新型コロナウイルス感染者が増え続けているという報道が盛んに出るようになると、立ち飲み屋の客足が目に見えるように減っていった。
 2月に入ると、さらに強烈な影響を感じることになる。2月15日から11日間、銀座三越の催事で出店した際、「エスカレーターから人が降りてこない。入り口が閉まっているのかな、と思ったほど」人が来なかった。「通常なら催事で完売する弥左エ門いなりが、3分の1近くにまで売り上げが減少。銀座は、不要不急の街なんだと痛感しました」。
 立ち飲みにした店の前にあったビルが工事中で、道路から丸見えになっていたため、「ウイルスを拡散する気か」と脅す電話がかかるようになったのが、2月末から3月初旬。安倍首相が、大規模イベントの自粛や小中高校の臨時休校を要請した頃である。
 3月になると、周辺の大企業が接待などの会食を禁じた影響で、予約がゼロに落ち込む。常連客がマメに顔を出すなどしてくれたが、そうした客も、3月29日に志村けんさんの感染による死去が報じられると来なくなった。
 営業が厳しくなった店が退去した空き店舗を、中国人がどんどん買っているという噂を聞き、「空き物件はほとんど、中国の方が押さえる。時代の流れだから仕方ないかもしれないけれど、古きよき銀座が姿を変えていくんだ、とゾッとしました」と寂しそうに話す。
 その頃は、銀座や新宿、浅草、六本木以外の街では、オフィスが通常営業してまだ大きな影響がなかったのか、周囲の人たちに不安や困難を話しても、なかなか理解してもらえなかったという。
 しかし、志村けんさん死去の報道で、ほかの地域の店も状況が似てきた。「みんな一緒だと心が落ち着いて、次の方向へと舵を切ればいいだけだと思えました。わかってもらえないことがいちばんへこんだので」と茅島氏。「ただ、今でもそうですけど、住民が多い町や乗換駅、もともと予約が取りにくい店はそれほどダメージがないようです」。

テイクアウト用に新たないなりを「開発」

 こうした中、4月中旬から弥右エ門いなりと、真空パックした料理の販売を開始。6月5日からスナックだったテナントを借りテイクアウト専門店とした。デリバリー、インターネットサイトを立ち上げての通販も始めた。いなりずしは1日20箱程度が売れていく。
 いなりずしはもともと、穴子と五目の2種類だったが、コロナ禍で価格が1.5倍ほどになった穴子の仕入れは難しくなっていた。豊洲市場では、高級食材のマグロ、カニ、エビ、アワビは安くなっているが、日常的に店で使うような魚は高騰しているという。
 「高級魚は料理屋が営業していないから売れない。一般の人はさばけないから、スーパーへは回せない。漁で獲るだけ損をしかねないから、漁師さんが漁を大きく減らしてしまいました。輸送費も、通販で物を買う人が増えた影響でトラックが足りず、高騰しました」(茅島氏)
 そこで別の具材の商品を開発。穴子の代わりに、以前から店で使用していた尾崎牛の「弥左エ門いなり 尾崎牛しぐれ」、8個2593円だ。尾崎牛は、宮崎県の尾崎宗春氏が独自の配合飼料で育てた牛で、肥育期間が通常より長い。茅島氏は「コクも甘みもあるのに脂の融点が低いので、胃もたれしないしアクも出にくい。年配の方でもおいしく召し上がっていただけます」と説明する。
 五目の代わりに開発したのは、「はぜる白ごま」1個139円(販売は2個以上から)。具材は白ごまだけのシンプルないなりずしだ。
 真空パック入り商品については、実は2年前からの蓄積があった。「おせちを作ってほしい」と客から要望があったが、おせちは通常、日持ちさせるために濃い味付けをする。しかし、濃い味にすると魚勝の味でなくなってしまう。そこで、「迎春おつまみセット」のような商品を開発し、季節ごとに出していくことにしたのだ。行楽弁当を依頼されたこともある。
 真空パック用に試作すると、変色するもの、水が出るものなど、真空パックに向かない料理もあり、開発は試行錯誤だった。そうした蓄積があったからこそ、今回テイクアウト向けの商品開発はすぐにできた。以前から店で人気があった「尾崎牛のぴり辛こんにゃく」「カキの山椒オイル煮」「納豆チャーハン」などのセットで、製造日から5日間もつ。
 ウーバーイーツにも登録したが、客の評価が集まった店が上位にくるサイトで、新規の自店は選んでもらいにくい。そこで、従業員の雇用を守るためもあって、2人体制でカーシェアを利用し、23区内で行き先の曜日を決めて宅配することにした。告知と注文はフェイスブックで行う。それ以外の地域は通販対応にした。朝9時に出勤して仕込みをし、午後1時から出発。店にいる2人は、片付けや精算などを行う。
 デリバリーを行ってわかったのは、いかに遠くから来店してもらっていたかだ。例えば練馬区大泉だと、銀座から20キロもある。遠方から来ていたのだから、外出自粛になると来られなくなる理由も納得できた。
 実際にデリバリーすると、道に迷うなど配達の素人として苦労した。区画ごとに細かく入り口やエレベーターが分かれている高級マンション内で、30分迷ったこともある。しかし、人気は高く、最大で1日12カ所配達した。通販では、「地方の両親に送りたい」という人や、来店したことはないが投稿を見て注文してくれた人もいる。
 デリバリーのスタッフが戻ってくるのが午後7時半や8時。9時に退勤。通常営業しているときより、3時間ほど労働時間が前倒しになった感覚だ。

家賃だけでも2カ所で100万円

 定番商品だけでは飽きられる、と他店とのコラボ商品も売った。会員制の別の和食店とコラボして自店が6品、相手が10品で2万円のおかず、おつまみなどのセット商品を出す。日本酒とペアリングをしたときもある。今後は、コロナ時代にうまく対応できずにいる、老舗の味を残す意図を含めたコラボも考えているという。
 飲食店への国の対応が進まないこと、対策が十分でないことは、テレビなどでもたくさん報道されている。実際、銀座魚勝への支援も足りない。何しろ、家賃だけで2カ所合わせて毎月100万円もかかるのだ。
 4丁目の店は6月に閉店したが、銀座の慣行で、退去予告は6カ月前に行う必要があるので、営業しなくても家賃だけは払い続けなければならなかった。値下げ交渉にも応じてもらえなかったため、緊急手段で保証金から償却してもらう形で工面した。一方、普段から付き合いがある㐂津常の大家は、家賃を半額に下げてくれた。
 東京都の感染拡大防止協力金は4月末に、国の持続化給付金は5月初めに申請済みだ。東京都のお金は6月に入ったが、国からは7月2日にようやく入った。申請書類は複雑で、4回も書き直している。「もちろん、税理士に頼めばすぐに書類を作ってくれますが、100万円程度のために税理士に頼んだら、手元にほとんどお金が残らないです」。日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付も申し込んだが、面談の順番がこない。
 そうでなくても、リニューアルで手元資金がなくなったところでのコロナ禍だ。知人に頼んで借り、しのいだという。4人の社員は解雇しないで済んでいるが、2~3人のアルバイトにはシフトを減らしてもらった。
 6月15日から通常営業を再開したが、満席にはしないで、1日1~2組のみを受け入れている。3面ある窓を開け、今まで大皿盛りで取り分けていたのを、1人分ずつ皿に盛る、アルコール消毒をするなどの対応はしているが、席数半分以下でも値上げをするわけにはいかず、経営が厳しい状況は変わらない。
 徐々に通勤する人が増えるなど都会に人は戻りつつあるが、茅島氏は「ハレ」の場でもある銀座の飲食店がかつてのような活気をすぐに取り戻せるとは考えていないという。実際、今でも多くの企業は会食を全面解禁していないうえ、高級クラブなどにも客足は完全に戻っていない。住宅地の飲食店に人出が戻っているからといって、銀座はそうとも限らないのだ。

周りの飲食店の助けにもなりたい

 今、構想しているのは、第2波が来るなど次の困難に向けて、急速冷凍機や真空パック機などをクラウドファンディングで資金を集めて買うことだ。「真空パックの料理を全国発送するための、地域のお店が利用できるパッキング・ステーションを作りたい」と茅島氏は言う。「何かやるなら声をかけてくれ」と言ってくれる店は多いという。
 「飲食店のビジネスは、5~8%しか利益が出ない薄利多売のもの。それでもやるのは、普通では会えないお客様と対等に話ができ、喜んでいただけるのがうれしいから」と茅島氏。
 これだけアイデアを絞り、対策を売って売り上げを確保している店ですら、営業が厳しい。コロナ禍が飲食店にもたらすダメージは計り知れないほど大きいのは明確だ。
 飲食店は、働く人の雇用を守る場であるとともに、利用する人の憩いの場であり、日々の食事をまかなう不可欠な場でもある。そこで人が交流することで、新しいビジネスや文化が生まれ、人間関係が深まる。そもそも食自体が文化である。たくさんの人が利用し、喜んでいた店をどうしたら守れるか。地域、国、そして消費者がそれぞれ守る方法を考えなければならない。そして、店舗も自らを守る方法を見つけ出す必要がある。もしかすると、そこから新しいビジネスの可能性が生まれるかもしれない。

 【ワシントン=横堀裕也】米国のトランプ大統領のめいで臨床心理士のメアリー氏が14日に出版予定の著書で、トランプ氏が大学進学の際、知人に金銭を払って「替え玉受験」を行ったなどと暴露していることが明らかになった。米主要メディアが7日、一斉に報じた。
 報道によると、メアリー氏は著書で、トランプ氏が大学進学適性試験(SAT)を受験する際、「テストが得意な知人を選んだ」と記した上で、名門ペンシルベニア大ウォートン校に合格できたのは替え玉受験のおかげだったと主張しているという。
 トランプ氏の姉で元連邦高裁判事のマリアン氏が2015年、トランプ氏が16年大統領選に立候補したことを受けて「彼はピエロだ。勝てるわけがない」などとこき下ろしていたとの記述もあるという。
 ケイリー・マクナニー大統領報道官は7日、記者団に「うそが詰まっているだけだ」と述べ、著書の内容を全面的に否定している。
米の老舗ブルックス・ブラザーズ、経営破綻…ボタンダウンシャツで人気
 創業200年を超える紳士服の老舗で、ビジネススーツやネクタイなどの有名ブランドとして知られる。1890年代にボタンダウンのシャツを発売し、人気を集めた。リンカーンやケネディら歴代の米大統領にも愛された。
 日本には1979年に進出。世界40か国以上に約500店舗を展開している。
 同社は声明で、「新型コロナウイルスの大流行はビジネスが直面していた課題を加速させ、大きな打撃を与えた」とした。破産法申請については「廃業を意味するわけではなく、未来を守り続けるためだ」と強調しており、新たな資金の出し手を見つけるなどして、事業継続を目指すという。
 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると、カジュアルな服装を採用する企業が増えたことで、スーツを購入する男性が少なくなり、経営不振に陥っていたという。
 【ワシントン=船越翔】米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、米国の新型コロナウイルスの感染者数は8日、累計で300万人を突破した。7日には1日ごとの新規感染者数が過去最多の約6万人に達し、感染拡大が収束する見通しは立たない。
 米国では6月中旬から感染の再拡大が始まり、南部のテキサス州や西部のカリフォルニア州ではここ数日、1日に約1万人のペースで感染者が増えた。米紙ニューヨーク・タイムズによると、全米50州のうち36州で新規感染者数が増加傾向にあり、多くの州で飲食店の営業を制限するなど、経済活動を再び規制する動きが出ている。
 一方、トランプ政権は感染の再拡大について楽観的な見方を繰り返し示しており、ペンス副大統領は8日の記者会見で「一部の州で感染防止策の効果が表れ始めている」と述べた。
行方不明者の捜索をする警察官(右)と自衛隊員ら(9日午前8時59分、熊本県津奈木町福浜で)=杉本昌大撮影
 梅雨前線の影響で豪雨に見舞われた九州で、7月に観測された72時間雨量が観測史上最大を更新した地点が27地点(8日時点)に上ったことが、気象庁のまとめで分かった。最初の大雨特別警報が出る前の2日以降、断続的に大雨となっている。熊本県は9日、新たに3人の死亡を発表し、一連の大雨の死者は計60人となった。前線は九州に停滞しており、気象庁は今後も大雨となる恐れがあるとみている。
 大雨での人的被害は、死者60人のほか、心肺停止1人、行方不明17人となっている。
 3~8日に観測された九州7県の全163地点の雨量を集計した。その結果、大分県9地点、福岡、熊本県の各5地点、鹿児島県4地点、長崎、佐賀県の各2地点となり、宮崎を除く九州6県の計27地点で観測史上最大を記録。うち月ごとの平年降水量が確認できる24地点で平年の7月1か月分の降水量を上回った。まとまった雨が長時間降ったことで、被害が拡大したとみられる。
 最も多かったのは7、8日に筑後川が氾濫し、市街地が大規模に冠水した大分県日田市の862ミリ。死者・行方不明者42人を出した2017年の九州北部豪雨の際、甚大な被害が出た福岡県朝倉市で観測された616ミリ、18年の西日本豪雨で被災した広島市の444ミリを超えた。
 熊本県では、氾濫した球磨川の流域にあり、土砂崩れや集落の孤立が相次いだ芦北町は517・5ミリ、あさぎり町は660ミリに上り、それぞれ平年の7月1か月分の412ミリ、485ミリを上回った。
 24時間雨量は九州の19地点で観測史上最大を更新したが、うち約4割に当たる8地点が同県だった。4日は球磨川流域の湯前町で411・5ミリ、人吉市で410・5ミリを観測した。
 豪雨では、九州を南北に移動する前線に湿った空気が流れ込み、積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」が4日以降、各地で発生。球磨川流域など同じ場所に雨雲がとどまり、大雨が降り続いた。気象庁は4日に熊本、鹿児島県、6日に福岡、佐賀、長崎県に大雨特別警報を発表した。
 気象庁は、土砂災害や河川氾濫などの危険性を地図で示した「危険度分布」をホームページ上で公開し、注意を呼びかけている。


京都縦貫自動車道の沓掛インターチェンジ付近で発生した土砂崩れ=9日午前9時23分、京都市(共同通信社ヘリから)© KYODONEWS 京都縦貫自動車道の沓掛インターチェンジ付近で発生した土砂崩れ=9日午前9時23分、京都市(共同通信社ヘリから)  
  9日午前7時半ごろ、京都縦貫自動車道の沓掛インターチェンジ(京都市西京区)の料金所付近で土砂崩れが発生し、車3台が土砂に押し流されたと110番があった。
 京都府警によると、2人が搬送されたが、いずれも軽傷。斜面が幅約30メートル、高さ約20メートルにわたって崩れ、土砂が道路上に流出し、インターチェンジの出入り口が閉鎖された。車に閉じ込められたり、土砂に埋まったりしている人はいないとみられる 京都地方気象台によると、京都市では6日未明から断続的に雨が降り、事故直前の約1時間は43・5ミリの激しい雨だったという。
 現場は同ICの料金所の手前。同ICは通行止めとなっている