2020年7月9日木曜日

骨太方針案 不安の払拭で経済再生を図れ


 新型コロナウイルスの感染拡大は日本の経済・社会の弱点を浮き彫りにした。着実に克服し、経済を回復軌道に乗せなければならない。
 政府が、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」原案をまとめた。感染症対策と経済活動の両立をテーマに掲げた。
 経済再生には需要喚起が不可欠だ。国民が安心して外出し、消費ができる環境を整えたい。
 不安を取り除く上で要となるのは万全な医療提供体制である。
 第1波では、感染の疑いがあっても速やかにPCR検査が受けられなかった。原案は、検査能力を戦略的に拡充するとしたが、数値目標には踏み込めなかった。
 現在、1日約3万件で他の先進国より少ない。検査にあたる医療従事者を増やし、民間検査会社との連携を急ぐことが重要だ。必要に応じて検査が受けられるという安心感を提供してもらいたい。
 さらに不安軽減への妨げとなったのは、予算執行の遅れだ。
 政府は補正予算で1人10万円の現金給付や中小企業向け持続化給付金制度の創設を決めたが、支給が滞った。素早く届かなければ、支援の実感が得られない。
 個人の銀行口座とマイナンバーがひも付けられておらず、諸外国と比べ、行政手続きのデジタル化の停滞が目立った。
 国と各自治体で情報システムや業務手続きが異なることも混乱を広げた。現金給付のオンライン申請や、感染者に関するデータのやりとりが円滑にできなかった。
 様々な問題点を解決して不安を払拭ふっしょくし、経済の立て直しにつなげることが急務である。
 原案は、政府内に民間の専門家らを集めたデジタル化の新たな司令塔を設けると記した。マイナンバー制度の使い勝手を良くする抜本改革に取り組むという。
 デジタル化の推進は当然だ。使いやすく、国民が恩恵を感じられる仕組みを構築し、執行体制の目詰まりを解消してほしい。
 対面や書面の押印を前提とした慣行の見直しを含め、社会全体の効率化を後押しするべきだ。
 持続化給付金などの民間委託では、事業者の選定や高額な委託費に批判が出た。国民が不信感を抱けば、対策の実効性が低下しよう。透明性の確保が欠かせない。
 九州地方の豪雨など、激甚化する災害も国民の不安感を高めている。原案は、デジタル技術を非常時の危機管理や復旧の迅速化に生かすとした。命を守る施策の強化に努めることが肝要だ。

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