2020年7月9日木曜日

河井夫妻起訴 倫理観の欠如に驚かされる


 国会議員の夫妻による選挙違反事件の真相解明は、法廷に委ねられた。多額の現金を広く提供した理由を、2人は自ら説明するべきだ。
 衆院議員の河井克行・前法相、妻の案里・参院議員が、公職選挙法違反(買収など)で東京地検特捜部に起訴された。
 克行容疑者は、法秩序を守る法務省のトップを務めていた。過去には法務副大臣も経験している。法務行政を熟知しているはずの政治家が、買収の罪に問われること自体、驚きを禁じえない。
 克行容疑者は案里容疑者が初当選した昨年7月の参院選広島選挙区で、地元議員ら100人に計約2900万円を提供し、案里容疑者も一部で共謀したとされる。
 現金の提供先は、多くが地元の県議や市長といった有力者だった。金額は1人あたり200万円に上るケースもあった。選挙結果がカネによってゆがめられたとすれば、ゆゆしき事態である。
 克行容疑者は現金提供を大筋で認める一方、買収の意図は否定しているという。いかなる趣旨にせよ、倫理観に欠け、金銭感覚が異常だったと言わざるを得ない。
 特捜部は克行容疑者を公選法上の「総括主宰者」と認定した。総括主宰者の買収は、法定刑が重く規定されている。克行容疑者が選挙運動を実質的に取り仕切り、責任は重大と判断したのだろう。
 公選法には、買収の趣旨を認識して現金を受け取った側も「被買収」として処罰する規定がある。現金を提供された側の処分について、特捜部は「現時点で起訴していない」と述べるにとどめた。
 50万円を受け取った市議は、その後、案里容疑者を応援するはがき約3000枚を有権者に郵送した。「買収の意図は感じたが、現金は生活費に充てた」などと説明しているという。
 現金を受け取った議員の一部は謝罪や辞職に追い込まれた。60万円の受領を認めた市長は、丸刈り姿で謝罪の記者会見を開いた。起訴されるかどうかにかかわらず、道義的責任は免れまい。有権者の理解も得られないだろう。
 今後の裁判では、克行容疑者らが現金を提供した趣旨が、票の取りまとめを依頼するためだったかどうかが争点になる。
 克行、案里両容疑者はこれまで、公の場で事件について説明してこなかった。提供された資金は、どこから捻出したのか。選挙の前に自民党本部から案里容疑者側に振り込まれた1億5000万円との関連性も解明してもらいたい。

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