9月26日 よみうり寸評
ソ連は1957年に、人類初の人工衛星スプートニクを打ち上げた。直径約60センチの小さな物体にすぎなかったが、宇宙へ一番乗りを果たし、世界に衝撃を与えた◆同様の国威発揚を狙ったのだろう。ロシアは先月、新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」を世界で初めて承認した◆最終段階の臨床試験を終えずに承認したことに、諸外国はむしろ驚いた。プーチン大統領が自分の娘に接種を受けさせるなど宣伝に力を入れても、国民の半数は「接種を希望しない」と世論調査に答えたという。見切り発車の承認で、安全性や効果の確認が置き去りになったと疑われても仕方あるまい◆米国のワクチン開発計画「ワープ・スピード(超高速)作戦」も名前は負けていない。しかし、選挙戦のさなかのトランプ大統領がせかしても、現実には一足飛びに完成というわけにはいかないようだ◆日本政府もワクチンの確保を急ぐ。勇ましい名前は要らない。安全性に留意し、「急がば回れ」の姿勢を忘れずに取り組んでほしい。