2020年10月3日土曜日

 

10月2日 よみうり寸評

 「大東京の将来」を考え、立て看板で表現する。復員して広告会社に職を得た〈私〉に、そんな仕事が与えられる。終戦後の食糧難を描いた梅崎春生の小説「飢えの季節」である◆仕事はなかなか進まない。頭に浮かぶ東京の理想像が一つしかなかったからだ。〈おでん屋や鰻屋やそば屋がずらずらとならんだ、そして安いお金でどんなにでも飲み食い出来る都市〉、これだけだった◆食物屋だらけになればよい――〈私〉の独白は当時の国民に共通する願いであったろう◆なのにつれないではないかと、作家が存命なら思ったかもしれない。多くの人が外食を控えるようになったばかりか、心ない言葉で休業を迫る動きもあった。そうして全国の飲食店が苦境に追い込まれた戦後75年である◆飲食店を支援する「Go To イート」が始まった。〈効果「予想以上」〉。一夜明けての朝刊の見出し(東京版)に安堵あんどしつつ、仕組みがどこまで周知されているのか気になる。疲弊したお店にあまねく栄養が行き渡りますように。


10月3日 編集手帳


 『ローマの休日』の新聞記者役といえば、世紀のダテ男グレゴリー・ペックである。一方、この映画のすこし前に主演した『世界を彼の腕に』は近代史に相まって名を残す◆ペックが演じたのは、ロシアからアラスカを買い取るという豪快な夢を抱く船乗りだった。米国が実際にアラスカを買い取った史実を背景に、人間の勇壮なロマンを描く◆トランプ大統領が昨夏グリーンランドを買収したいと表明したとき、一瞬ながらダテ男のペックをよぎらせてしまった。世界からあまりに強引だと批判を浴び買収はならなかったものの、支持率がそれで下がったとは聞かない◆豪快で予測不能な大統領はむしろ支持者の望むところなのだろう。そんなトランプさんが新型ウイルスに感染した。これも予測不能な大統領の一面にちがいない。職務は続けているとされるが、しばらく官邸に隔離され、一月後に迫る大統領選に大きな痛手となる。とはいえ弱気になって白旗をあげる人ではあるまい◆先の映画の題をもじってみる。『世界を誰の腕に』――権力の攻防を描くドラマが終幕に向け、大転換したところかもしれない。

 読売新聞オンライン

NTT事業再編 5G時代に世界と戦えるのか

 デジタル化が加速する中、世界に対抗していけるか。日本の情報通信産業の競争力強化につなげてもらいたい。 NTTは、約66%の株を保有している上場子会社のNTTドコモを完全子会社化すると発表した。4兆円強を投じて株式公開買い付け(TOB)を行い、残り約34%の株式を一般の株主などから買い取るという。

 国内企業へのTOBでは、過去最大規模になる。

 日本の通信業は、高速・大容量通信規格「5G」網の整備や関連事業で世界に後れを取っている。「GAFA」と呼ばれる米巨大IT企業に押され、インターネットを使ったサービスでも劣勢だ。

 巻き返しが急務である。NTTがグループの一体感を強め、意思決定の迅速化と経営効率化を図る狙いは理解できる。

 「5G」では高画質の映像が瞬時に送れるようになり、自動運転や遠隔手術、ドローンによる測量などが可能になると期待されている。新たな分野で「GAFA」と勝負するには、斬新なサービスをいかに生み出すかが問われる。

 NTTは、ドコモと長距離通信を手がけるNTTコミュニケーションズなどを連携させる意向だ。グループの力を結集し、新事業の創出に生かしたい。

 「国産5G」の技術開発に向けて、NECとも資本・業務提携している。5Gの先も見据え、異業種との協力を強化してほしい。

 一方、ドコモは、ピーク時には60%近くに達していた携帯電話市場のシェア(占有率)が37%にまで下がっている。本業の利益は業界3位に落ちた。

 米アップルの「iPhone(アイフォーン)」の発売で他社に先行され、スマートフォン時代への対応などが遅れたことが要因だ。NTTは、ドコモの事業てこ入れのために、完全子会社化が必要だと判断したのだろう。

 今後は、菅内閣が掲げる携帯電話料金の値下げが焦点となる。NTTの澤田純社長は記者会見で、「財務基盤が整うので、値下げの余力は出てくる」と強調した。

 ドコモは上場廃止となるため、配慮すべき一般株主がいなくなる。利用者への利益還元の姿勢を示すことが大切となる。

 かつてのNTTへの回帰ともいえる完全子会社化を、政府は容認する方針だ。KDDI(au)とソフトバンクは、ドコモが圧倒的な強者になりかねないと警戒している。政府は、公正な競争環境の確保に目配りせねばならない。

 

トランプ感染で「ペンス大統領代行」も視野 中露の挑発を警戒

配信    https://news.yahoo.co.jp/articles/


産経新聞

 【ワシントン=黒瀬悦成】新型コロナウイルスへの感染が判明したトランプ米大統領が2日、ワシントン近郊の医療センターに入院したことで、トランプ政権は大統領の症状が悪化し職務の遂行が困難になった場合に備え、ペンス副大統領が大統領代行を務める事態を視野に入れ始めた。


読売新聞  10/3