2020年10月3日土曜日

 読売新聞オンライン

NTT事業再編 5G時代に世界と戦えるのか

 デジタル化が加速する中、世界に対抗していけるか。日本の情報通信産業の競争力強化につなげてもらいたい。 NTTは、約66%の株を保有している上場子会社のNTTドコモを完全子会社化すると発表した。4兆円強を投じて株式公開買い付け(TOB)を行い、残り約34%の株式を一般の株主などから買い取るという。

 国内企業へのTOBでは、過去最大規模になる。

 日本の通信業は、高速・大容量通信規格「5G」網の整備や関連事業で世界に後れを取っている。「GAFA」と呼ばれる米巨大IT企業に押され、インターネットを使ったサービスでも劣勢だ。

 巻き返しが急務である。NTTがグループの一体感を強め、意思決定の迅速化と経営効率化を図る狙いは理解できる。

 「5G」では高画質の映像が瞬時に送れるようになり、自動運転や遠隔手術、ドローンによる測量などが可能になると期待されている。新たな分野で「GAFA」と勝負するには、斬新なサービスをいかに生み出すかが問われる。

 NTTは、ドコモと長距離通信を手がけるNTTコミュニケーションズなどを連携させる意向だ。グループの力を結集し、新事業の創出に生かしたい。

 「国産5G」の技術開発に向けて、NECとも資本・業務提携している。5Gの先も見据え、異業種との協力を強化してほしい。

 一方、ドコモは、ピーク時には60%近くに達していた携帯電話市場のシェア(占有率)が37%にまで下がっている。本業の利益は業界3位に落ちた。

 米アップルの「iPhone(アイフォーン)」の発売で他社に先行され、スマートフォン時代への対応などが遅れたことが要因だ。NTTは、ドコモの事業てこ入れのために、完全子会社化が必要だと判断したのだろう。

 今後は、菅内閣が掲げる携帯電話料金の値下げが焦点となる。NTTの澤田純社長は記者会見で、「財務基盤が整うので、値下げの余力は出てくる」と強調した。

 ドコモは上場廃止となるため、配慮すべき一般株主がいなくなる。利用者への利益還元の姿勢を示すことが大切となる。

 かつてのNTTへの回帰ともいえる完全子会社化を、政府は容認する方針だ。KDDI(au)とソフトバンクは、ドコモが圧倒的な強者になりかねないと警戒している。政府は、公正な競争環境の確保に目配りせねばならない。

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