9月19日 編集手帳
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わにさんが虫歯になってしぶしぶ歯医者さんに行った。歯医者さんは遊んでいたけど、わにさんが来たのでしぶしぶ治療をはじめる◆絵本のロングセラー『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』(五味太郎、偕成社)は、ワニと歯医者の心理を時々刻々とまったく同じセリフで描いていくところが他に類を見ない。治療開始の場面では、「こわいなあ」とふたりして心のなかでつぶやく◆ワニとの間で、よく似た心理劇があったことだろう。その生き物の大きな口と日々向き合い、発声法が人と同じであることを突き止めたという◆西村剛・京都大准教授(45)が加わる日米欧のチームが、愉快で奥深い研究をたたえるイグ・ノーベル賞を受賞した。「ワニにヘリウムガスを吸わせるのは大変でした」と西村さん。ガスで変化する鳴き声に耳を澄まし、口や鼻のなかで起きる「共鳴」という現象が人のそれと同じであることを解明した◆今どき、口、鼻、発声と来れば世を騒然とさせている問題を浮かべてしまう。それとは何の関係もない研究らしい。マスクやアクリル板とも。けったいな安心感とともに頬がゆるむ。
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