2020年11月26日木曜日

 読売新聞オンライン

  • <速報> 都内で新たに481人感染…重症患者6人増え60人

11月26日 編集手帳

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 牛スジとコンニャクを甘辛く煮込んだ神戸の名物料理「ぼっかけ」は「ぶっかけ」がなまったといわれる。元祖的な食べ方はうどんだという◆相場英雄さんの警察小説『アンダークラス』(小学館)に刑事が寒風に吹かれながら、うどん屋の前で足を止める場面があった。<ぼっかけをのせたうどんを食べたら、冷えた体にみ渡るだろう>と思う◆阪神大震災で、被害の大きかった長田地区の景色である。悲痛な天災から暮らしの匂いを取り戻した街の象徴として、うどん店が描かれていた。来年のカレンダーが手元に届いたとき、この場面を思い出した◆阪神の大地震から25年の節目となった年が残りひと月ほどで去り、次に東日本大震災から10年となる年を迎える。「復興した日本を世界に見てもらいたい」と五輪に絡めて言う人がいるけれど、どこか抵抗を覚えてきた。家族を失うなどつらい経験をした人たちには、復興したと過去形で口にできる言葉ではあるまい◆先の小説で相場さんは、きれいに区画整理された街を「地元の方が懸命に再興された証拠」と言うにとどめる。心を砕いた情景描写だろう。

11月25日 編集手帳 

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 鉄道やバスのなかった時代は、にわか雨にあえば軒下を借りて降りやむのを待つしかなかった。江戸川柳にいくつも古句が残る◆なかでも有名なのがこれだろう。<本降りになって出て行く雨宿り>。様子を見ていると、どんどん本降りになっていく。しかたなくずぶぬれになって出て行くとき、ぐずぐずしなければよかったと悔やむ一句を先の3連休の景色に思い浮かべた◆多くの観光地で行楽客の密集が見られた。「Go To キャンペーン」が後押ししたことは確かだろう。感染が急拡大する時期に、予算をさいてウイルスのよろこぶ環境を作っている場合ではあるまい◆政府のメッセージが弱くないだろうか。西村経済再生相は先週、今後の感染状況を「神のみぞ知る」と述べた。それはそうだとしても、国民の健康危機への憂慮を前面に押し出してほしかった。感染防止と経済活動の両立をめざしてきたが、ここに来て傾斜配分はどうなのだろう。現状でいいか、感染抑止に比重を移すか。迷いがあるように思えてならない◆<雨宿り出ようとしてはよしにする>。菅さんの困った顔が軒下にあるような。

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