12月2日 よみうり寸評
中国の4000人台に対し、米国は20万人を超える。新型コロナに感染して亡くなった人の数だ◆中国で社会学者と称する人物がこんな講演をしたという。「米国と比べれば一人も死んでいないに等しい」「14億人のうち4000人が死んでも誰も病気になっていないのと同じだ」◆中国の人もあきれたらしい。批判が噴出しているという記事を読売新聞オンラインで見た。「数字の背後には一人一人の命がある」――講演者に向けられた言葉は、コロナに限らず死者の数を語る者への戒めと読める◆例えば交通事故である。50年前に1万6000人を超えていた犠牲者が昨年は3215人になった。今年は11月末時点で2541人と昨年同期をさらに300人余り下回る。確かな減少は評価できても、死者の数を挙げて「よかった」とは言えない◆過去25年の統計を見る。12月の犠牲者がどの年も一番多い。忘年会自粛で今年は少なくなるとの観測も聞く。数字がどう出ようと、そこに「一人一人の命がある」のは変わらない。
12月2日 編集手帳
そろばんってすごいんだよ、と俳人の声が聞こえるかのような句が中村草田男にある。<寒星や神の算盤ただひそか>◆ほっそりした外見からは想像できないほど、大きな数の計算をこなす。整然と並ぶ玉をさえざえと光る冬の星に例え、宇宙を背景に神とたたえている。そんなスケールの大きな計算道具から派生した言葉が、「桁違い」もしくは「桁外れ」だという◆ここ数日、二つの桁の違う数値を比べて、うんうんと
12月3日 編集手帳
イチョウは元来、日本にはなかったといわれる。いつ伝来したのか? 国文学者の吉海直人さんが古典に探したところ、平安期の「枕草子」や「源氏物語」には記述が見あたらなかったという◆「銀杏」として定着したのは室町時代の1400年代とされている。したがって、各地の樹齢1000年を超えるという大木はほとんどが言い伝えではないかと、吉海さんは著書『暮らしの古典歳時記』(角川選書)にやや残念そうに書いている◆これがイチョウ並木となると、歴史ははっきりしている。燃えにくい木であるため関東大震災以後に街路樹として需要が高まった◆黄葉の季節が来ている。秋から冬にそっと踏み出すために作られたかのような黄色のトンネルが目を和ませる。日本気象協会が公開する「黄葉・落葉マップ」を見た。静岡市や福井市、高松市では黄葉するやいなや、落葉もはじまったと告げている◆散歩がてら落葉を見かけ、与謝野晶子の歌を浮かべた方もいらっしゃるだろう。<金色の小さき鳥のかたちしていちょう散るなり夕日の丘に>。来年はマスクなしで、小鳥たちと戯れたいものです。
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