2020年11月23日月曜日

 読売新聞オンライン


やまとたい」周辺で、中国漁船による違法操業が急増している。政府は毅然きぜんと対応し、日本の漁業者の権益を守らねばならない。 能登半島沖の日本海中央部に位置する大和堆は、水深が浅く、暖流と寒流が交わるため、イカやカニなどが多くとれる。日本の経済的主権が及ぶ排他的経済水域(EEZ)内にあり、外国漁船は許可なく操業できない。

 だが、近年は、北朝鮮の漁船による違法操業が常態化し、昨年には、水産庁の漁業取締船との衝突事故が発生している。

 今年に入ってから、中国漁船が一気に増加した。水産庁は、18日時点で昨年の約4倍となる延べ4000隻以上の中国漁船に警告を発している。日本の主権を侵害する行為であり、容認できない。

 水産庁と海上保安庁は、警告しても従わない場合は、放水して漁船を追い払っているという。ただ、数が多すぎて阻止できないと説明している。監視と取り締まりを強化してもらいたい。

 日本政府は、中国政府に対応を申し入れているが、明確な改善はみられない。実効性ある措置を取るよう、繰り返し求めていく外交努力が不可欠だ。

 人工衛星などで漁業を監視している国際非営利組織は、中国漁船が2017~18年に周辺海域でとったスルメイカの漁獲量が、日本を上回ったと分析している。

 水産庁の調査では、日本近海のスルメイカの資源量は、19年に70万トン強となり、5年間で7割も落ち込んでいる。

 中国の大型漁船による違法な乱獲を止めなければ、資源の減少はさらに深刻になりかねない。

 水産庁によると、昨年まで目立った北朝鮮漁船が今年は急減している。北朝鮮が、新型コロナウイルスの影響で漁業を制限しているためだとみられている。

 経済的に困窮する北朝鮮が中国に漁業権を売却し、北朝鮮漁船に取って代わる形で、中国漁船が増えている可能性があるという。

 国連安全保障理事会は、北朝鮮が漁業権を売買することを禁じる制裁決議を採択している。日本政府は国際社会と連携し、実態解明を進めることが必要だ。

 9月には北朝鮮の公船が大和堆を航行し、水産庁が日本漁船に対して、この海域での操業自粛を求める事態が起きた。漁業者は10月下旬まで出漁できなかった。

 安全確保のためとしているが、本末転倒と言うほかない。政府は、北朝鮮に注意を促すべきだ。

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