11月23日 編集手帳
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教科書は、毎日めくっても破れないよう、丈夫に作られていることをご存じの方は多いだろう。コミック雑誌は、子供が手にとった時に喜ぶようにと、嵩の張る紙を使っているそうだ。昔をはたと思い出す◆本の紙に様々な工夫が施されていることを、佐々涼子さんの著書「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」で知った。東日本大震災で被災した日本製紙石巻工場(宮城県)が、生産を再開するまでを記している◆出版不況と言われ、電子書籍が普及して久しい。そこに感染症の危機が訪れ、押印の廃止やペーパーレス化の議論が進んでいる◆昭和世代の抵抗と言われれば、それまでかもしれないが、手に触れて、すぐに読み返すことのできる紙の本の魅力は代え難い。文芸書や雑誌それぞれ表紙の光沢や色合いが異なり、所有欲を満たしてくれる◆「紙つなげ」では、職人芸のように機器を扱うベテラン従業員が紙への思いを語っている。「娘とせがれに人生最後の一冊を手渡すときは、紙の本でありたい。メモリースティックじゃ、さまにならないもんな」。デジタル化を推進する政治家も頷くのではないか。
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