2020年12月16日水曜日

 読売新聞オンライン

12月16日 よみうり寸評

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 言葉の海はどこまでも深い。作家の織田作之助が〈ざっと数えて三十ぐらいの意味に使える〉と随筆に書いたのが大阪弁の「ややこしい」である◆広辞苑は〈こみいっている。複雑でわずらわしい〉で済ませているが、『大阪ことば事典』はさすがに詳しい。〈ヤヤコシイ男やなァ〉という用例ひとつとっても、〈本心のはっきりせぬ、つかまえどころのない〉…と語釈が列挙されている◆〈話のつじつまの合わぬ〉との意味もあるというから、浮かんでくる姿がある。就任から3か月を迎えた菅首相である◆遅まきながら「Go To トラベル」の全国一斉停止に踏み切るが、「移動によって感染は拡大しない」との言を変えない。誰もが矛盾を覚えよう。感染抑止に向けた「勝負の3週間」のかけ声が空回りした現状への危機感が、これで十分伝わるのだろうか◆いまこそ持てる言葉を尽くし、コロナ対策への理解と協力を国民に呼びかけるべきときだろう。なぜ記者会見を渋っているのか、なんともヤヤコシイお人である。


12月16日 編集手帳

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 先週、小松政夫さんのほうに接した。享年78。急逝を悼みながら、本棚から小松さんの自伝的小説『のぼせもんやけん』を引っ張り出した◆植木等さんの付き人になる前、横浜で車のセールスマンをしていた時代を書いている。営業先で何時間も粘るのが常で、女性をつかまえては「いやあ、キレイ! たまりませ~ん、どうしてどうして?」。活字からあの甲高い声が聞こえてくる◆「のぼせもん」とは故郷の博多で、何でもすぐに夢中になる人を言う。自伝の題にしたのは、がむしゃらな明るさで頑張って良かったと思えたからだろう◆横浜時代の会社の仲間への感謝も多くつづっている。有名なギャグのうち「どうかひとつ」は、同僚のセ


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