編集手帳 2020/6/27
「世界中の電話という電話は、みんな母親という女性たちのお膝の上かなんかにのっているのじゃないか」。庄司薫さんの小説『赤頭巾ちゃん気をつけて』は、少年のぼやきで始まる。
◆「女友達にかけるときなんかがそうで、どうゆうわけか、必ずママが出てくるのだ」と。小説が書かれて半世紀以上になる。今は絶滅に等しいぼやきだろう。持ち歩ける電話が手ごわい関門を亡きものにしてひさしい。◆文部科学省がスマートフォンや携帯電話の中学校への持ち込みを認める案をまとめた。保護者や教員の間に賛否あるだろう。◆中学生のスマホ利用率は約七割に上がる。「原則禁止」から転換したのは、災害時の緊急連絡をはじめ、部活動や塾通いで帰宅が遅い生徒の安否確認など利点が多いとの考えからという。かといって、ゲーム依存、有害サイトの閲覧、ネットいじめといった問題もついて回る。校内での使用を禁じても、登下校時まで目配りするのはむずかしい。◆昔は大人が手強い存在だったが、今はどうだろう。いつも少年少女の膝の上にあり、機能は複雑ときている。ぼやかせてみたいところだけれど。
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