あおり運転罪 取り締まり強化で安全を守れ
あおり運転罪を創設した改正道路交通法が施行された。他の車の通行を妨げることを目的にした幅寄せや急ブレーキなど、10類型が対象だ。事故を起こさなくても適用される。
5年以下の懲役または100万円以下の罰金など、飲酒運転と同程度の厳しい罰則が設けられた。違反した場合には、ただちに免許取り消しとなり、最長で3年間は再取得することができない。
これまで道交法の車間距離保持義務違反や刑法の暴行罪で摘発してきたが、行為の危険性に比べて罰則が軽すぎると指摘されていた。あおり運転を直接、処罰できるようになった意義は大きい。
かつて飲酒運転が厳罰化された際は、警察による取り締まりの徹底もあって、社会の意識改革が進み、事故が激減した。今回もドライバーの意識を高め、事故の抑止に結びつけねばならない。
あおり運転で相手を死傷させた場合に、法定刑が重い「危険運転致死傷罪」を幅広く適用できるようにする法改正も行われた。神奈川県の東名高速で2017年、無理やり停止させられた車の夫婦が死亡した事故がきっかけだ。
あおり行為自体に加え、その結果も厳しく問える法が整備されたことになる。痛ましい事故を防ぐ効果が期待できよう。
課題は、故意にあおり運転をしたことをどう立証するかである。刑罰や重い処分を伴うだけに、一般的に許容される運転との線引きには厳格さが求められる。
当事者らの証言に加え、スマートフォンの映像など客観的な証拠に基づく立証が必要になる。警察は適正な運用に努めてほしい。
カギを握るのはドライブレコーダーの普及だ。岡山県警は、あおり運転を記録した動画の提供を受け付けるサイトを設け、摘発につなげている。政府や自治体には購入費補助を進めてもらいたい。
警察庁が18、19年の悪質なあおり運転133件を分析したところ、加害者は10歳代など若年層の割合が高かった。「進行を邪魔された」など、被害者側に問題があると主張したケースが目立つ。
運転中に生じる怒りの感情をどうコントロールするのか。免許の取得時や更新時の講習を通じた指導の充実が欠かせない。急な車線変更をしないなど、あおり運転の被害に遭わないような運転方法を教えることも大切だろう。
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