よみうり寸評

• ９月２８日　よみうり寸評

  2020/09/28 15:00

  [読者会員限定]

  
  

     作家の獅子文六が半世紀以上前の随筆に書いている。〈昼間六大学戦を見て、夜、巨人・大洋戦を見たって、ちっとも退屈をしない〉◆続けて曰いわく〈あらゆるスポーツのうちで、見るだけでもたんのうさせるのは、野球と相撲だろう〉（「野球よもやま話」）。そう考える人にとって、プロ野球の公式戦と大相撲の本場所が重なる１５日間は至福だったに違いない◆スポーツ観戦の選択肢が格段に広がった今も、その感覚はある。まれな混戦に沸いた大相撲秋場所千秋楽の日曜午後、野球の結果を見届けるやテレビのチャンネルを切り替え、関脇正代と新入幕の翔猿の取組を待った◆思えば本場所が再開されてまだ２場所目、プロ野球も開幕からやっと３か月余りである。ついこの間まで日程や開催方式が確定していなかった国民的競技で今、熱戦が繰り広げられている◆あと３００日――２度目のカウントダウンが前日に報じられていたせいだろう、１５日間の余韻のなかで東京五輪のことを思う。大丈夫、こちらも何とかなると。

９月２８日　編集手帳

2020/09/28 05:00

[読者会員限定]

　元プロ野球監督の野村克也さんは生前、「日本一になりたい」という選手が多いことを心配していた。「具体的にどうするんや？」と聞くと、言葉に詰まってしまうからだという。著書「上達の技法」（日本実業出版社）にあった◆大きな目標は聞こえはいい。だが、実現するためのプロセスを考えることが大切。そこをおろそかにすると、成果が出ず、あきらめることになりかねない。そんな親心があったのではないか◆二つの政府のゼロ目標を思い出した。一つは、２０２０年度末までに保育所などに入れない待機児童をゼロにすることだ。先頃発表された待機児童は１万２０００人以上だった。介護離職ゼロも掲げているものの、離職者は１０万人近くいる。いずれも達成は難しそうだ◆国の約束だ。「無理です」ではすまされない。子育てや介護は、日々の生活にかかわる。待っていられない。達成できない理由は何か。実態をもとに丁寧に分析し、実現までの道のりを示してほしい◆新しく代わった内閣の面々を思い浮かべつつ、ノムさんの言葉を借りて、ぼやかせていただく。具体的にどうするんや？