2020/07/04 よみうり寸評
大観衆をのみ込んだ甲子園球場で、熱戦の火蓋は切られた。1951年のきょうと同じ7月4日、第1回オールスターゲーム初戦。勝利を呼ぶ先制打を放ち、殊勲賞に輝いたのは巨人の川上哲治だった◆テレビの本放送が始まる2年前、試合はラジオで中継された。多くの人がその音に耳を傾け、「打撃の神様」の活躍に心躍らせたことだろう◆70回目となる今年の球宴は中止となったが、シーズン戦はテレビやネットで中継され、盛り上がりを見せている。ファンを引きつけているのが「音」だという◆投球時に投手が発するうなり声。球種や球速によって変化する捕球音…。普段なら鮮明には聞こえるはずのない音と静寂がもたらす「想像以上の臨場感」の魅力を、直木賞作家の木内昇さんが本紙への寄稿に綴つづっている◆木内さんは原稿の終盤で「球場で声援を送れない寂しさ」にも触れる。10日からは、観客が段階的に球場に戻ってくる。いっとき、静けさが生む音を味わいながら、球場を大歓声が包むその日を待ちたい。
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