7月10日 編集手帳 2020/07/10 05:00 きのう用事があって、東京郊外のターミナル駅の地下を歩いた。ふと、ギターのメロディーに乗った若い女性の歌声が響いてきた◆そばに寄るのは高齢の女性が一人だけ。だが歌唱力と澄んだ声に引きつけられるのか、足を止めて遠巻きに聴き入る人たちも何人かいた。コロナ禍がなければ、歌いがいがあるほどに観衆を集められたことだろう◆ライブなどの開催がままならず音楽家には苦しい時世だが、プロの手前にいる人たちもはかない思いをしているらしい。かつての“密”な人通りは意外なほど、人生のチャンスや活力を社会に与えていたのかもしれない◆観光名所の商店街が一見(いちげん)の客に頼っていたのもしかりだろう。遊びに来た人がふと足を止め、混雑を気にせず店に入ってきたり…と。やはり人通りが“健康体”にならなければ、以前の元気や平穏は取りもどせそうにない。古い川柳にのんきな一句があったのを思い出す。<さまざまな人が通つて日が暮れる>(武玉川)◆東京の日ごとの感染者が過去最多の224人にのぼった。検査の網を広げたためらしいが、動揺を抑えつつ、戻りたい街の景色を思う。
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