9月25日 編集手帳
2020/09/25 05:00
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大相撲は昔、仕切りに制限時間がなく、いくらでも「待った」ができた。記録に残る最多の数は、慶応元年(1865年)11月の本場所、鬼面山対両国の一番が残した◆じつに95回も「待った」を掛け合ったという。ホントかと耳を疑う珍事だが、角界では、ある人が隣町の人形町に用事があって席を離れ、戻ったらまだ立っていなかったというエピソードまで語り継がれている◆幕末の騒然としていた時期にあたり、半藤一利さんが著書で述べている。<時代が大転換しようとしているとき、両国ではのんびりやっている。いつの世も庶民の営みとはざっとそんなもの>ではないかと(『名言で楽しむ日本史』平凡社)◆きのうの大相撲の一番に、今来ているらしい時代の転換点とやらをふと忘れた。新入幕の翔猿とびざる(前頭14枚目)が10勝目をあげ、優勝争いに残った。2敗で先頭集団を並走し、千秋楽まであと3番というところまで来た。新入幕で優勝すれば106
年ぶりの快挙だという◆ユニークなしこ名の力士がその名の通り、猿のような機敏な動きで番付上位を倒していく。令和の土俵のこれもホントの話である。
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