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今月5日、約3か月遅れで『半沢直樹 特別総集編・前編』(TBS系)が放送され、同時間帯トップの世帯視聴率13.0%を記録したほか、ネット上は「この日を待ってました」「倍返しキタ!」「やっぱり面白い」などの好意的な声で盛り上がりました(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
12日には『半沢直樹 特別総集編・後編』が放送され、19日にはいよいよ続編がスタート。2013年から7年間待たされた上に、新型コロナウイルスの影響でさらに3か月延期されていたのですから、盛り上がるのは当然でしょう。
ネット上の声を見ていくと対照的だったのは、同じ2013年に大ヒットした『あまちゃん』(NHK)。当時は「月~土曜に『あまちゃん』、日曜に『半沢直樹』を見る」という人が多かった2大国民的ドラマでしたが、ここにきて残酷なほどに明暗が分かれているのです。
2013年の放送終了後、『あまちゃん』はBSやCSで再放送され、NHKオンデマンドの配信でも見られた一方、『半沢直樹』は再放送どころか配信もなし。「半沢が出向を命じられて終わる」というラストシーンから「続編確実」と言われながらもなかなか実現せず、ファンをやきもきさせてきました。
しかし、今年に入って両者の明暗が一変。『半沢直樹』は1月3日にスピンオフ企画『半沢直樹・エピソード0 狙われた半沢直樹のパスワード』が放送され、2月から3月にかけてTBSラジオで『半沢直樹 敗れし者の物語 by AudioMovie』も放送。さらに続編もスタート間近であるなどファンを喜ばせ続けています。
一方の『あまちゃん』は、主演の能年玲奈さんが所属事務所との契約トラブルで「のん」に改名し、女優業としての活動がほとんどないなど、続編の話どころではない状態。それでもこの7年間、舞台となった岩手県久慈市のロケ地観光は常に活発で、毎年さまざまなイベントも行われてきました。しかし、今年6月28日でドラマの展示がされた「あまちゃんハウス」が閉館(一部展示は別施設に移設)され、のんさんが岩手県を走る予定だった聖火リレーも中止。盛り上がる『半沢直樹』ファンとは対照的に、『あまちゃん』ファンには悲しい出来事が続いているのです。
◆再び人々に希望を与えるドラマを
あらためて振り返ると、『あまちゃん』と『半沢直樹』は同じ時期に放送されていただけではなく、多くの共通点がありました。
主なものだけでも、「タイトルが主人公そのもの」「主人公が年上や上司に敬語を使わないことが多い」「主人公の家族仲がいい」「決めゼリフの『じぇじぇじぇ』『倍返し』が流行語年間大賞を獲得」「視聴者を飽きさせない2部構成」「舞台系俳優たちを大量起用」「テーマ曲がインストゥルメンタル」などが挙げられます。
また、2013年の年末に「今年のナンバーワンドラマはどれか」という話題になったとき、「半沢直樹派」と「あまちゃん派」に二分されるなど、互いの存在を意識していたファンたちは少なくありません。
だからこそ「『半沢直樹』ファンが続編に盛り上がる今、『あまちゃん』ファンからさまざまな声が挙がりはじめています。その声は、「『半沢』ファンが純粋にうらやましい」という羨望から、「私は『あまちゃん』の続編も、のんちゃんの女優復帰もあきらめない!」という希望、「芸能事務所もテレビ局もひどすぎる」という怒り、「さすがにもう無理かもしれない」という絶望まで多岐に渡っていることが、愛情の深さともどかしさの証ではないでしょうか。
『あまちゃん』も、『半沢直樹』も、東日本大震災による重苦しいムードを払しょくできなかった当時の日本人に笑顔や爽快感、そして希望を与えるような作品でした。現在も新型コロナウイルスという思わぬ災いによって重苦しいムードで覆われているだけに、『半沢直樹』の続編に盛り上がるのは当然ですし、だからこそファンたちはこのタイミングで「『あまちゃん』の続編も見たい」と思ってしまうのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など
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