2020年7月22日水曜日

          7月22日 編集手帳

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 粗忽そこつ者とは、そそっかしい人や慌てん坊を言う。落語の好きな方には八つぁん、熊さんの登場する「粗忽長屋」がおなじみだろう◆まずは八五郎、行き倒れ騒ぎに通りかかった。亡くなった人を見て同じ長屋の熊五郎だと言ったものだから、引っ込みがつかなくなる。長屋に帰るやいなや、ぴんぴんしている熊さんに、「お前は死んでいるのに気づいていない」と説得をはじめ、熊さんはなぜか納得してしまう◆その人が4日ばかり八つぁんのようであったことは否めないだろう。観光支援事業「Go To トラベル」を前倒しした赤羽国土交通相である◆首都圏でコロナウイルスの感染者が急増すると、慌てて東京発着を補助の対象から除外した。同時にキャンセル料は補償しないと言い切り、批判が出ると一転、4日後に方針を翻した。そそっかしさの代償を旅の予約客に払わせようとした政府を国民はどう思ったろう◆ただし事業の前倒しは過ぎた粗忽に思えない。観光業の危機は深刻だ。慌てるぐらい急がないと、倒れるホテルや旅館がある。救われる人がいるなら、八つぁんへの責め方に難しい面がある。

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