2020年8月22日土曜日

加藤綾菜さん (撮影/写真部・高野楓菜)© AERA dot. 提供 加藤綾菜さん (撮影/写真部・高野楓菜)  加藤茶さんの妻・加藤綾菜さんが、45歳差婚で世間の注目を集めた結婚から9年。献身的に夫を支え、「財産目当てでは」と揶揄する声が飛び交った結婚当初の荒波を乗り越えた今だからこそ話せることを、作家の林真理子さんがうかがいました。
*  *  *
林:5年前にご主人(ザ・ドリフターズの加藤茶さん)にこのページに出ていただいたときに、「お元気ですね。なんでそんなにお若いんですか?」って聞いたら、「すべて妻のおかげです。妻がいろいろやってくれて、ほんとにありがたいです」って、5回ぐらいノロケてましたよ(笑)。
加藤:わー、うれしいです。
林:だからきっと素晴らしい奥さまなんだろうなと思ってました。ご主人、あれからずっとお元気なんでしょう?
加藤:メッチャ元気になりました。私と出会う4年前、63歳のときに大動脈解離という大きな病気にかかって、結婚して3年後には、その薬の後遺症でパーキンソン症候群になって、そのあと1年ぐらいリハビリとかやって、すごい大変でした。
林:あのころ、「(綾菜さんが作る)食事が脂っこい」とか、週刊誌にいろいろ書かれてましたよね。
加藤:ドリフ時代はいつも出前で、ラーメン、トンカツがふつうだったみたいなんです。そのときはまだ新婚ラブラブなんで、「嫁さんが揚げてくれたトンカツだよ~」ってブログにあげたら、加トちゃんファンの人から「トンカツを食べさせて殺そうとしている。毒妻!」とかクレームが来て、そんなのが2、3年続きました。
林:たしか「後妻業」という言葉がはやり始めたころで、たぶんそれに乗っかったんですよね。
加藤:あと、80代の人と20代の女性が結婚して、数カ月後に毒殺されるという海外の事件も重なって、「この女も加トちゃんを殺そうとしているから気をつけてください」って。当時は私たちの家も特定されて、「加トちゃんにひどいことするな! 別れろ!」と言いに来られたり、自転車をボコボコにされて木に吊るされたりしました。
林:怖い! 前に綾菜さんが「しくじり先生」にお出になってるのを見たら、「もし私がそのつもりなら、8年も待つなんて効率悪いことやりません。すぐやってます」とか言ってたから笑っちゃった(笑)。
加藤:初めて加トちゃんとテレビに出たときに、あいさつに行っても、加トちゃんがいないと口きいてくれない人がふつうにいました。エレベーターに乗ったときも、「なんで加トちゃんと結婚したの? 有名になりたいからでしょう?」ってタレントさんに言われました。
林:そんなひどいことを言う人がいたんですか。
加藤:世間の人だけじゃなくて、芸能人も「加藤綾菜は財産目当てだ」と思ってるんだなとわかって、よけい意地になったというか、「絶対、加トちゃんと仲良く生きていきたい」と思うようになりました。あそこでハラが決まったというか。
林:お野菜も、徐々に徐々に増やしていったという感じですか。
加藤:加トちゃん、大味なものしか好きじゃないので、ちょっと塩分を減らしたら「味しないわ」とか、「ニンジン残す」とか、「ピーマン食べれない」とか言うんです。インスタントラーメンにバターとコンビーフ一缶入れて混ぜて食べるとか、そんなのがメッチャ好きなんですよ。今も文句言いながら食べてるという感じです。
林:でも、それでお顔もだんだんツヤツヤになってきたんですね。
加藤:出会ったとき血圧が196だったんですよ。それで減塩専門の料理教室に行って勉強して、減塩料理を食べさせて、今やっと135ぐらいまで落ちてきたんです。
林:綾菜さんの場合は年齢差45歳ですから、「8時だョ!全員集合」は見たことないですよね。
加藤:まったくないです。「ドリフ大爆笑」の再放送をちょっと見るぐらいで。でも、お母さんとお父さんが加トちゃん世代なので、初めて加トちゃんを実家に連れてったときは、もうメッチャ緊張してました。
林:そうでしょうねえ。
加藤:お母さんとお父さんが玄関先で正座して、「よくいらっしゃいました! ありがとうございました!」みたいな感じで、加トちゃんがソファに座って、お母さんとお父さんが地べたに座って、「大ファンです!」みたいな感じだったので、すんなりオッケーもらいました(笑)。
林:そりゃそうですよね。社会現象みたいな番組で、子どもたち、加トちゃんに「宿題しろよ」って言われて、加トちゃんの夢を見て寝るみたいな感じだったから。
加藤:へぇ~、うれしい。
林:その子たちが大人になって、「加トちゃんに幸せになってほしい」という気持ちが、綾菜さんへの攻撃になっちゃったんでしょうね。嫉妬もあったかも。若いきれいな女の子と楽しそう、みたいな。
加藤:一緒に暮らし始めたころ、私、大学生だったんですよ。「なんで大学卒業したばっかりの子と? 気持ち悪い」という偏見もたぶんあったと思います。
林:「しくじり先生」で生徒の一人に「おばあちゃんと同い年の人を好きになるなんて理解できない」と言われたら、「すごくきれいなおじいさんなんです」って言ってましたね。
加藤:そう、すごくきれいなおじいさんです。私が和食屋さんでアルバイトしてるときに、加トちゃんがフラッと来てくれたのがきっかけだったんですけど、初めて会ったときに、それまで感じたことがないときめきを感じたんです。
林:ほぉ~。
加藤:そのあとも加トちゃんが食べに来てくれて、お話するようになってほんとにハマってしまいました。
林:どういうところがよかったんですか。やさしかったんですか。
加藤:やさしかったです。それと、顔もタイプだったんですよ。ちっちゃくて可愛らしい感じが好きで、どストライクで。
林:たとえばジャニーズとかは好きじゃなかったんですか。
加藤:ええと、ほかにもいろんな芸能人の方が食べに来てたんですけど、一回もときめいたことはなかったんです。
林:おー、他の方はメじゃなかったんだ(笑)。
加藤:ぜんぜん加トちゃんのほうが上でした。「なんなんだ、このきれいなおじいちゃんは」という感じで。
林:加藤茶さんが自分の電話番号を綾菜さんに渡したんでしょう?
加藤:そうです。レジのところでそっとコースターを渡されて、見たら裏に電話番号が書いてあって、うれしくて家に帰ってドキドキしながら電話したんです。そしたらすごくフィーリングが合って、「あしたの朝5時に世田谷のロイヤルホストに来ない?」って言われて。
林:スターさんにしては地味なお店ですね(笑)。
加藤:私に合わせてロイヤルホストを選んでくれたんだと思って、ドキドキしながらその日は寝れずに、朝5時にきれいな格好して行ったんです。そしたら、加トちゃんと左とん平さんと小野ヤスシさんが並んでいて、3人の前に座らされて、「出身は?」から始まって……。
林:面接みたいじゃないですか。
加藤:そうです。加トちゃんとは一言も話させてくれないままその日は終わって、次にまた呼ばれて行っても3人いて、半年間ずっと3対1でデートしました。
林:おじいさんたちとデートして楽しかったですか。
加藤:ぜんぜん楽しくなかったです(笑)。
林:二人っきりになりたいよね。
加藤:なりたかったですけど、加トちゃんが「気になる子がいる。大学生なんだけど」と言ったので、小野さんが「そんなのロクな女じゃない。俺が見てやる」というんで、認められるまでは3対1でした。
林:「いい子だ」って認めてくれるまで半年かかったんですか。
加藤:そうなんです。一回、加トちゃんに「二人っきりでデートしたくない?」って言われて、新橋だか銀座だかの映画館に呼び出されたんですけど、予告があって本編が始まるときに、ポップコーン持った左とん平さんが私の横に座ったんです。
林:ええ~っ!
加藤:だから予告の10分だけ加トちゃんと二人っきりでいたんです。
林:なんかコントみたい(笑)。この前、志村けんさんが急に亡くなっちゃいましたね。「二人はライバル」と言われてたけど、綾菜さんがあのとき「二人はほんとに仲良くて、だから主人はこんなに落ち込んでます」と言って、あのコメントはみんなの心に刺さったと思いますよ。
加藤:「たぶんライバルなんだな」と思うときはあるんですけど、ほんとに仲いいなと思います。志村さんが70歳を過ぎて名人の域に達して、「これからどんな活躍をするんだろう」みたいなことを加トちゃんがよく言ってたんです。だから「すごく残念だ」と言ってました。いろんな週刊誌の方が家に来られて、「加トちゃん、一言ください」みたいな感じだったんですけど、言える雰囲気じゃなかったというか、加トちゃん、すごく落ち込んじゃって、ずっと部屋から出ませんでした。
林:奥さんがいてよかったですね。
加藤:私もそう思いました。私がいなかったら、たぶん死んでたと思います。
林:神様からのプレゼントですね。
加藤:ぜんぜん逆です。加トちゃんに会って私は変わったと思います。私に厳しいんですよ。いつも凛としていて、学ぶことが多くて。
林:ずっとスターでやってきた方だから、特別な哲学だとか人生観を持ってるんだと思いますよ。そういう人から吸収できて、綾菜さんも幸せですね。加藤さんだけが幸せじゃなくて。
加藤:幸せです。好きで一緒になったんですけど、それ以上に、一緒に生きていく同志みたいな絆を感じてます。「加トちゃんに会いたくて胸が苦しい」みたいな時期はもう過ぎて、「この人を幸せにしたい」という気持ちになったんです。戦友みたいな感じです。
>>【加藤茶とは会う前から…妻・加藤綾菜「私、おじさん好きじゃないんです」】へ続く
(構成/本誌・松岡かすみ、編集協力/一木俊雄)
加藤綾菜(かとう・あやな)/1988年、広島県生まれ。2011年、加藤茶と結婚。夫を献身的に支える妻としてテレビや雑誌に取り上げられ、注目を集める。夫との日常を綴るインスタグラムやYouTubeチャンネル「加藤家の日常」も人気。
※週刊朝日  2020年8月28日号より抜粋

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