2020年8月22日土曜日

ワクチン「過度な期待は禁物」…効果は未知数、副作用に懸念も


新型コロナウイルス感染症対策分科会であいさつする西村経済再生相(右)、左は尾身茂分科会長(21日)
新型コロナウイルス感染症対策分科会であいさつする西村経済再生相(右)、左は尾身茂分科会長(21日)
 新型コロナウイルスのワクチンへの期待は高まっているが、順調に開発できたとしても、現時点でワクチンにどれだけの効果があるかは分かっていない。21日の政府の分科会では、感染症が専門の委員から「過度な期待はしないように」と、冷静な対応を求める意見が相次いだ。「肺や気道に感染するウイルスのワクチンで、感染そのものを予防する効果を持つものはこれまでない」
 分科会で感染症の専門家の一人が発言した。季節性インフルエンザのワクチンも、効果が認められているのは重症化予防だ。新型コロナウイルスのワクチンに感染予防の効果を期待し、元の生活に戻れると考えていた一部の委員からは、落胆の声も漏れたという。
 専門家の間に根強いのは副作用への懸念だ。開発中のワクチンの多くは、ウイルスの遺伝子の一部を使った新しいタイプで、これまで一般の医療現場で使われた例はない。限られた人数に接種する臨床試験では分からなかった重い副作用が、販売後に明らかになるケースも想定される。
 2002~03年に中国などで流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)に対するワクチン開発の動物実験では、接種によって抗体と呼ばれる免疫物質が体内にできたが、かえって症状を悪化させた例があった。
 このため、分科会の提言では、販売開始後の調査体制の整備や、健康被害が生じた場合の救済措置の検討を求めた。優先接種の対象でも接種を希望しない人を想定し、接種を拒否する権利も十分に考慮する必要があると明記した。
 ワクチンは健康な人が接種するもので、病気の人を治す薬以上に高い安全性が求められる。尾身茂分科会長は会合後の記者会見で、「効果や安全性の面からどんな場合に使えるか、または使えないのかの議論も必要になる」と語った。
 その後に会見した西村経済再生相は「ワクチンの効果などについて国民にきちんと理解してもらうことが大事だ。接種を受けられるようになることが安心につながる」と強調した。

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