2020年8月29日土曜日

レナウンが持つ複数ブランドの譲渡が決まったが、売却先が決まらなかったものもある(編集部撮影)© 東洋経済オンライン レナウンが持つ複数ブランドの譲渡が決まったが、売却先が決まらなかったものもある(編集部撮影)  経営破綻から3カ月。かつて日本一の売上高を誇った名門アパレル企業の行く末が、ようやく決まった。

5月に子会社を通じて民事再生法の適用を申請し、スポンサーを探していたレナウンは8月21日、同社が展開する高級紳士服「ダーバン」などのブランドを大阪のアパレル企業・小泉グループに譲渡すると発表した。
 小泉グループ傘下のオッジ・インターナショナルに「ダーバン」(2018年度の売上高は52億円)・「スタジオバイダーバン」・「アクアスキュータム」(同61億円)の3ブランドを、小泉アパレルに「シンプルライフ」(同30億円)・「エレメントオブシンプルライフ」(同62億円)の2ブランドを、それぞれ9月末にも譲渡する。売却額は公表していない。
 今回譲渡が決まらなかったブランドは譲渡交渉を取りやめ、生産・販売を順次終了する方針だ。主力ブランドの1つで、ショッピングセンターを中心に展開していた「アーノルドパーマータイムレス」も売却先が見つからず、ライセンス契約が切れる2020年11月ごろをメドに営業を終了するもようだ。事業譲渡の後、レナウン本体は清算される可能性が高いという。

社員にとっても解体は「想定内」

会社消滅という結末は、多くのレナウン関係者にとってサプライズではなかった。直近までレナウンで働いていた社員は、「スポンサー探しを始めて間もない頃から、交渉の情勢は極めて厳しいと聞いていた。会社自体は清算されてなくなるだろうと、ある程度想定していた」と淡々と語る。
 実際、レナウン社内では複数のスポンサー候補と交渉していた6~7月から海外事業や内部監査、広報などに関わる部署を早々に廃止し、“会社解体”を見据えた準備を進めていた。
 とはいえ、今回の事業再生スキームが「計画外事業譲渡」となったように、レナウンの経営陣や管財人の永沢徹弁護士は当初、会社を丸ごと買ってくれるところが現れると想定していたようだ。「新しいスポンサーを6月中には決定したい」。民事再生手続きの開始が決まった直後、永沢弁護士はレナウンの社員らにこう説明した。

 複数の関係者によると、その後すぐにレナウンの前会長である北畑稔顧問は複数の大手アパレルの首脳らに連絡。支援を打診したものの、新型コロナウイルスの影響でどこも売り上げが壊滅的な状況に陥っている中、前向きな返事は一向に得られなかった。
 入札に応じた複数のスポンサー候補とも、譲渡価格をめぐって折り合いがつかずに交渉は長期戦へと発展。裁判所に再生計画案の提出する期限(8月17日)までにメドは立たず、提出期限を延長することになった。結果的に会社ごと受け入れてくれる「救世主」は見つからず、ブランドを切り売りする道しか残されなかった。
 主要販路の百貨店の凋落とともに顧客の減少に歯止めをかけられず、赤字が常態化していたレナウン。新型コロナ禍というタイミングの問題もあったが、かつての名門企業に買い手がつかなかった理由の1つは販管費の高さだった。
 「とにかくコストが高すぎる」。レナウン関係者によると、複数のスポンサー候補は交渉に当たり、会社を丸ごと買うことに対しこう難色を示したという。
 とくにネックとなったのが人件費だ。2019年末時点でのレナウン単体の社員数は539人。約10年前から1割強減ったものの、この間に中高年以上の社員の割合は増え、一方で売り上げは減少の一途をたどった。レナウンの元幹部は「(2006年の)ダーバンとの合併で管理部門などの社員が増え、以降も人材配置の効率化がさほど進まなかった。事業規模の縮小と並行して、より踏み込んだ人員の削減が必要だった」と反省する。

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