7月29日 編集手帳
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イギリスの夏は気温が日本の5月頃と同じ程度らしい。1年で最も快適な季節とされ、シェークスピアが詩に織り込んでいる◆<きみを夏の一日と比べてみようか。きみのほうがもっと美しいし、もっと穏やかだ>(ソネット18番)。この詩の背景を知ったとき、気候は違えど、日本の夏には突き抜けるように高い青空があるではないかと思った覚えがある◆だが今年はどうも無理がある。これほど青空と久しく会えない夏は珍しい。南九州でようやく梅雨明けしたものの、前線が去らず、列島全体が日差しに包まれるのはまだ先のことだという◆何年か前に本紙歌壇で見かけた歌を思い出す。<干し竿のスペースいっぱい病む夫の布団干したり真夏日の朝>(富山市 政橋昭子)。朝の澄んだ空気のなか、柔らかな日差しが布団にそそぐ光景がすがすがしい。家族のご病気をいたわる気持ちと相まって、“夏の一日”がすばらしく美しいものに思えてくる◆布団の天日干しは湿気を取り除くのはもちろんのこと、減菌効果も高い。朝起きて窓に青空を見るや、布団を外に引っ張り出したくなるのはいつのことだろう。
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