医療・健康・介護のコラム
[看取り犬・文福](6)なぜ人の死を見守るのか 殺処分の恐怖体験が原動力?
文福が暮らすユニットでは、この8年間で20名近くのご入居者様が亡くなっています。その大部分の方の逝去を文福は予測し、 看取 り活動を行っています。文福が本当に人の死を予測できるのか、科学的な検証はできませんが、逝去された方の大部分について文福が看取り活動をした、ということは事実です。
人の死を匂いで感じても不思議じゃない
前にも書いた通り、拙著「看取り犬・文福の奇跡」の読者のお医者さんから、文福は匂いで人の死を感じ取っているのではないか、というお手紙を頂きました。そのお医者さんは、高齢者が何も食べられず、自然と弱っていき、亡くなる場合、ご自身も匂いで亡くなることを察知できることがあるとおっしゃっていました。人間でもできるのだから、嗅覚が優れた犬ならより可能であろうと。
うちのスタッフたちも、そう考えています。実際にさくらの里山科にも、ご入居者様があと数日で亡くなるかなということを、匂いで察知できるスタッフは何人もいます。文福ほどピンポイントではありませんが。何も食べられなくなり、水も飲めなくなり、木が枯れていくように自然な形でお亡くなりになる場合は、確かに独特の匂いが感じられます。嗅覚が敏感な人なら、そして犬の優れた嗅覚なら、その匂いをより鮮明かつ具体的に感じ取ることができても不思議はありません。
米国には看取りをする猫 最近はがん探知犬も
実はアメリカには、文福とよく似た行動をする猫がいました。ロードアイランド病院付属ナーシングホーム(老人ホーム)「ステアー・ハウス」で飼われていたオスカーという猫が、がん患者が亡くなることを予測して、その最期に寄り添っていたのです。こちらは、うちの文福みたいに、私たちが勝手に考えているようなレベルの話ではなく、医学誌で発表されるなど、科学的に検証されています。「オスカー 天国への旅立ちを知らせる猫」(デイヴィッド・ドーサ著、早川書房)という本も出版され、世界中でベストセラーになりました。
最近は、犬が嗅覚でがんを察知することも注目されていますし、海外では人の低血糖を感知する犬が実際に医療現場で働いているそうです。そのような事例を考えると、文福の行動も決して不思議ではないのかもしれません。
そこで私は一つの仮説を立ててみました。高齢者が何も食べられなくなって自然に亡くなるような場合には、すべての犬がその死を予測できるのではないかという仮説です。
この仮説が正しい場合、文福と他の犬の違いは、入居者の死を予測できるか、できないかではありません。予測して看取り活動をするか、しないかの違いです。
ではなぜ、文福は看取り活動をするのでしょうか。文福と一緒に暮らす他の犬は、ご入居者様の死を予測できたとしても、看取り活動はしていないのに、文福だけがしているのだとしたら、その理由は何なのでしょうか。
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