藤井二冠誕生 棋力のたゆまぬ研鑽称えたい
年少の二冠の誕生だ。初のタイトル獲得からわずか35日で、藤井聡太棋聖が王位を奪取した。 18歳1か月での二冠達成は、羽生善治九段の21歳11か月を大幅に塗り替える。同時に最年少での八段昇段も決めた。
新型コロナウイルスの感染拡大で沈滞しがちな社会を元気づける活躍である。高校生たち同世代にも良い刺激となろう。
持ち時間の長い2日制の七番勝負に初めて臨み、木村一基王位を4連勝で下した。第4局の封じ手では、飛車を捨てる大胆な攻めを選択し、ファンを沸かせた。
将棋界は2年前、八大タイトルを8人で分け合う群雄割拠の状態だった。これで渡辺明三冠、豊島将之竜王、永瀬拓矢二冠とともに4強時代に入ったと言える。
他のタイトル保持者に比べ、藤井二冠は、はるかに若い。平成時代に「永世七冠」を成し遂げた羽生九段に続き、令和時代の第一人者に上り詰めるのではないかとの期待も高まっている。
デビュー以来、特段のスランプを経験していない。強豪として相手に研究される側となっても、勝率は8割超を保っている。成長の原動力はたゆまぬ研鑽 にある。
コロナ禍の影響で公式戦が途絶えた約2か月間、自身の対局をじっくり検証していたという。自宅で過ごす時間を有効に使い、おごることなく、才能に磨きをかけ続ける姿勢を率直に称 えたい。
現代将棋はコンピューターソフトの棋力が向上し、手順を解析できるようになったため、逆に棋士の人間性が注目されている。勝負がついた後、藤井二冠が深く一礼する姿はすがすがしい。
敗れた棋士の佇 まいも、それぞれの魅力をうかがわせる。
藤井二冠にタイトルを奪われた棋聖戦の直後、渡辺三冠はブログで、負け方がどれも想像を超えていたと潔く認め、「自分の長所を生かして対抗できる策を見つけるしかない」と決意を示した。
最年長で獲得した初タイトルを失った木村前王位も「また一から頑張りたい」と再起を期した。将棋への敬意を新たにさせよう。
藤井二冠に憧れて、将棋に興味をもった子供たちも多いのではないか。日本将棋連盟は、こうした追い風を生かしたいところだが、感染防止のため、アマチュア大会などが開けない苦境にある。
長い目で、普及活動を考えるしかあるまい。礼儀を重んじる伝統文化としての良さを大切に、次代の愛好者を育ててもらいたい。
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