2020年7月16日木曜日

「セクシークイーン」として有名なアン・シネ (c)朝日新聞社
© AERA dot. 提供 「セクシークイーン」として有名なアン・シネ (c)朝日新聞社  近年、欧米のゴルフ界を席巻してきた韓国出身の女子プロゴルファー。2000年代の朴セリ(米ツアー25勝、メジャー5勝)の活躍をきっかけに高まったゴルフ熱と、国を挙げた強化システムの中、ジュニア時代からの熾烈な競争をくぐり抜け、世界へ飛び出した彼女たちには高い実力と精神力が備わっている。日本のJLPGA(日本女子プロゴルフ協会)ツアーにもこの10年、数々のプレーヤーが参戦してきた。その強さもさることながら魅力あふれる美貌で人気を集め、今では欠かせないツアーメンバーとなっている選手も多い。
 その筆頭は、やはりイ・ボミ。2010年に韓国のKLPGAツアーの賞金女王となり、翌年日本にやってきた「ボミちゃん」。2012年にJLPGAツアー初優勝を挙げると、その後、毎シーズン複数優勝を果たした。2015年は7勝と圧倒的な強さを見せ、文句なしのマネーリーダーとなる。このシーズンに獲得した2億3049万7057円は、男女合わせた国内ツアーの史上最高額となり、その記録はいまだ破られていない。身長158cmとけっして体格には恵まれていないものの、ゆったりとしたスイングから繰り出す正確なショットと安定した試合運びで、翌2016年も賞金女王に輝いている。
 それよりもファンの心を鷲づかみにしているのは「スマイルキャンディ」の愛称どおり、いつも絶えない笑顔だ。堪能な日本語と愛くるしい笑みで話しかけ、ファンとの交流を大切にするイ・ボミは、今やJLPGAツアーの顔になっている。努力を怠らず、謙虚さを忘れないプロとしての姿勢も、続く韓国プレーヤーや日本の若手選手に大きな影響を与えているだろう。
 イ・ボミと同じく1988年生まれ、同じく朴セリの活躍を見て育った「朴セリ・キッズ」であるのが、キム・ハヌル。2011、12年のKLPGAツアー賞金女王の実力者は、2015年から日本ツアーに参加した。初シーズンに1勝を挙げ、2017年までに通算6勝、そのうち2つは国内メジャーと位置付けられる公式戦での勝利である。
 ツアーきっての美しいスイングとともに、注目が集まるのはその美貌。170cmの長身とクールビューティーな雰囲気を持つものの、笑顔を忘れないキム・ハヌルは「スマイル・クイーン」と呼ばれる。プロ意識も高く、常にミニスカートでトーナメントをプレーし、韓国語で「空」を意味するハヌルにちなみ、スカイブルーを取り入れたウェアでファッションリーダーにもなっている。イ・ボミとは異なる近づきがたい印象がありながら、明るく親しみやすい性格を持つ、彼女のギャップに惹かれる熱狂的なファンは多い。
 キム・ハヌルの麗し系を継ぐ(?)のが、「セクシークイーン」アン・シネである。移住先のニュージーランドでゴルフを始めた彼女は、同国代表としてプレーした経験も持つ。その後、KLPGAツアーで3勝 、日本では2017年からプレーしている。いまだJLPGAツアーではトップ10フィニッシュはないが、日本初襲来でセクシークイーン旋風を巻き起こして以来、人気は絶大である。超ミニスカートに、ビビッドカラーのタイトウェアを身にまとい、果敢にピンを攻め続けるプレースタイルにファンは魅了されている。昨年は史上最難関と言われたJLPGAプロテストに合格した。実力を示すのはこれからである。
「次世代セクシークイーン」とニックネームが付いたのがユ・ヒョンジュ。韓国国内では主だった成績は残していないものの、2019年のJLPGA初参戦で注目度が急上昇した。タイプは違うが、アン・シネ同様、タイトなウェアがファッションモデルのようなスタイルを際立たせていた。身長172cmで1994年生まれの26歳。今シーズンはJLPGAのツアーカードを持たないため、国内でプレーを見ることのできる可能性は低いが、次世代セクシークイーンの再襲来が待ち望まれている。
 もう一人、忘れてはならないのはユン・チェヨン。KLPGAツアーでは1勝のみだが、日本ツアーには2014年からスポットでプレーし、2017年から本格参戦している。教科書通りの美しいスイングで、ショートゲームとゲームマネジメントが武器のゴルフをする。いまだ日本では頂点に立ってはいないが、3年連続シード権を確保しており、実力は証明済み。過去に2位を4度記録しており、すぐそこに優勝カップは待ち構えている。元祖美女ゴルファーとも呼ばれ、韓国では人気と実力を兼ね備えた選手が選ばれるKLPGAツアーアンバサダーを2009年の初代から務めていた(過去イ・ボミ、キム・ハヌルらも選ばれている)。アイドル系ともセクシー系とも異なる正統派として日本でも人気が高い。
 ほかにも昨年、2勝と大ブレイクしたペ・ソンウなど、JLPGAツアーには続々と韓国美女ゴルファーが参戦してきたが、この傾向はまだまだ続くのだろうか? 実は、JLPGAはツアーの出場権システムを変更している。これまでクォリファイングトーナメント(ツアー予選会・QT)に参加資格はなく、QTで上位に入ると海外プレーヤーもツアーで戦うことができた。しかし2019年からはQTの参加資格がJLPGAプロテスト合格者のみとしたため、韓国をはじめ海外勢は参戦しづらくなった。ボミちゃんやハヌルの活躍はツアーを活性化し、ファンが増えたことも確か。この先、実力を兼ね備えたコリアンビューティの襲来が減ってしまうのは、いささか寂しい気がするのだが……。(文・小崎仁久)

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