2020年7月30日木曜日

© AERA dot. 提供 岩手県内を走る車に貼られていたステッカー(C)朝日新聞社  依然として猛威をふるうコロナ禍のなか、岩手県の感染者数ゼロ状態がついに終わった。県庁のある盛岡市在住の筆者にとっては、残念なことだが、3カ月半にわたって、唯一のコロナゼロ県であった事実は揺るがない。

 むろん、これまでにも未確認の感染者がいたことは十分に考えられる。が、医師である妻と話していても、県外に比べて、入ってきているウイルス自体かなり少なそうだという体感的見解は一致していたものだ。
この岩手の奇跡(?)については海外のメディアでも報じられる一方、国内では患者隠蔽説(苦笑)までささやかれる始末。ただ、県や県民が表立って特別なことをやってきた印象はない。
 ちなみに、達増拓也知事は最近のインタビューでこんな発言をしている。
「感染者ゼロには、色々な要因があると思っていまして、岩手は1都3県、東京、神奈川、千葉、埼玉を合わせた面積より広く、人口密度が低い。県民性が真面目で慎重だということ。岩手県は日本の中でも外国との行き来が比較的少ないほうだという要因もあると思います」(文春オンライン)
 なお、そこに付け加えるなら、知事自身の功績も見逃せない。外務省時代、今回のコロナ禍で一躍有名になった米国のジョンズ・ホプキンス大学の国際研究高等大学院に留学。学んだのは政治学だが、衛生学の重要性にも気づかされた。それゆえ、知事として対応にあたった東日本大震災でも被災地での感染症対策に力を入れることに。こうした経験が、コロナ禍での迅速かつ的確な対策につながったわけだ。
 また、最近の岩手がコロナに対して、ゆるんでいたかというと、意外とそうではない。第2波到来ともいわれる今はもとより、全国的に落ち着いていた頃も含めて、ピリピリ感とビクビク感が持続されていたのだ。
 病院も役所も飲食店も、岩手初のコロナ感染者は出したくないし、県民ひとりひとりだってそれにはなりたくない。田舎ゆえ、いざ感染が拡大したときの医療体制も不安だ。いわば、コロナゼロ県ならではの独特なプレッシャーを抱えていた。
 そういえば、4月には、県内の病院が妊婦の受け入れをめぐり、混乱をきたしたことが報じられた。その実情は里帰り出産が予約されておらず、不慮の破水による飛び込み出産だったため、感染対策もあってやむをえない対応だったが、あのニュースで岩手のピリピリ&ビクビクムードを感じた人もいるだろう。
 ただ、ここでいうピリピリやビクビクはそういう表立ったものではない。県や県民全体にどことなく漂う空気感だ。そして、それこそが岩手をコロナゼロ県にしていたのだと思われる。

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