夫の不倫相手に直接会った妻たちの本音
一昔前までは、妻に浮気を疑われても、男たるもの、絶対に認めてはならぬという掟があった。ところが今はスマホもあって、妻は夫の浮気の証拠をつかみやすい。あげく、ちょっとカマをかければ認めてしまう男たちも増えている。最近では、妻が夫の不倫相手に会うケースがとても多くなっている。なぜ会ったのか、会って何をしたかったのか。夫の不倫相手に会った妻たちに聞いてみた。
興味半分で、怖いもの見たさに
夫が2年に渡って不倫をしていたことが、結婚8年目にして発覚したと話してくれたのは、サチコさん(39歳)。発覚したのは2年前だ。「既婚者同士のつきあいとして2年って長いと思うんですよね。聞けば相手にもお子さんがいるという。当時、うちの子が7歳、不倫相手には9歳と6歳の子がいたとか」
彼女は部署は違うが夫と同じ会社で、3歳年上だった。彼女の夫は、有名企業の管理職だということだった。
「夫の様子がおかしいので問いつめたらすぐ白状しました。相手のことも夫から話してくれて。夫は完全降伏で、『サチコの好きなようにしてください』という状態。だから私は連絡をとって、相手の女性に会いました。どうして会いたいと思ったのかなあ。最初は興味半分だったんですよ。怖いもの見たさみたいな気持ちもあった。でもだんだん、うちの夫のどこがいいのか、なぜ不倫をしたのか。それを聞きたくなっていったんです」
夫と彼女の勤める会社近くのカフェに彼女を呼び出した。夫にも、彼女に会うと連絡をしておいた。
彼女は青ざめた顔で、だが目だけは異様に輝かせてやってきた。
「責めるつもりはなかったんですね。華奢で小柄な女性でした。私の前に座ったきり、何も言わないんです。謝らせようという気持ちで会ったわけじゃないけど、何も言わないのも失礼だなと思いましたね。ただ、ふと見ると、ハンカチを握りしめた手が震えている。それを見て、こちらが余裕をもてました」
あなたの夫に言いつける気はない。大ごとにするつもりもない。ただ、夫のどこが好きになったのか、不倫をしている自分をどう思うかを尋ねた。
「するとしばらく黙っていた彼女が、きっと顔を上げて、『私は夫と気持ちが通い合ってないし、もう男女の関係もない。彼もあなたとの夫婦関係がうまくいってないと言った。お互いに身も心も愛し合っているんです』って。びっくりしましたね。母親としてそういう言葉を吐いてはいけないでしょうと言ったら、『母親は女であってはいけないんですか』と逆襲されて……。そんなに愛し合っているなら、お互いに離婚すればいいじゃないですか。うちの夫からは離婚したいという言葉は出ていませんけどね。むしろ、遊びだったって言ってますよと言ってやりました」
最後のひと言は、サチコさんのちくりと刺したウソである。その言葉に相手は急に勢いをなくした。
「私はあなたとバトルするために来たわけではない。お互い、これ以上、家庭に持ち込まないほうがいいんじゃないですかと、今度はやんわり言いました」
すると彼女は急に泣き出した。聞けば、彼女の夫は浮気三昧、あげくモラハラをされている。だが、自分は派遣社員で、離婚しても子どもたちを育てていけるだけの経済力はないというのだ。それに同情したのがサチコさんの夫だった。
「なんだかかわいそうになってしまって、最後は彼女を慰めたり励ましたりして別れました。帰宅した夫にそのことを言ったら、『えっ』ってびっくりしてた。彼女は派遣ではなく正社員で、実は彼女の夫も同じ会社の別の営業所にいる。人望が厚くて非常にいい人なんですって。だからこそ夫は身が細る思いで不倫を続けていた、と」
もはやどちらが言うことが正しいのか、サチコさんには判断ができなくなっていた。ただ、少なくとも彼女が正社員であることは確かだろう。夫は同僚なのだから。そして最終的には夫を信じることにしたという。
「まあ、いろいろ懲りたんでしょうか。あれからやけに私に優しいし、今のところ不審な点はありません」
もちろん、モヤモヤしたものは抱えている。彼女の華奢で青白い顔も、ときどき思い出す。だが、もう“彼女という第三者”に振り回されたくない。そんな思いが強いようだ。
リアル彼女に会って負けて、むしろ冷静に
ナナコさん(44歳)は、昨年秋、夫の不倫相手に会った。夫が浮気をしていると感じたものの証拠がない。そこで自ら夫を尾行して、相手の女性を突きとめたのだ。「妻という立場をバカにするなよと、夫にも彼女にも腹が立ってたまらなかった。だから相手を特定して会いに行きました。相手はスナックのママさんでした。夫はけっこう彼女にのめり込んでいたみたいで、かなりお金も渡していたみたい。子どもの学費だってまだまだかかるのに。親として情けないですよ」
相手の女性の店に乗り込んでいった。ママはナナコさんと同世代のように見えた。身分をあかさずに飲んでいると、ママのほうから探りを入れてきたという。
「名字を名乗ると、ママはしれっと、『あら、そうですか。いつもごひいきにしていただいて』と営業用の笑みを浮かべた。『公私ともにご厄介になっているみたいで』と言ったら、素知らぬふりをされました」
その後、ママはナナコさんを誘って外に出た。近くの公園でふたりで話したという。
「私はあくまでも仕事としてお客さんを受け入れているだけ、とママさんは断言しましたね。男女の関係も受け入れるんですかと言ったら、それは誤解です、と。『自分の夫でしょう、疑ったらいけませんよ』とも。むかつきましたね。『店を早じまいして、あなたと夫がラブホテルへ行ったの知ってるんですよ』と言ったら、『そんなことは一度もないですよ』と言い張る。『私はシングルマザーなので稼がなければいけないんです。仕事以外のことはいたしません』ですって。カッカとしていたんですが、その言葉を聞いて少し冷静になりました。つまり彼女は、夫とは恋愛ではないと明言しているわけですよね」
結局、彼女に熱を上げていたのは夫のほうだった。ナナコさんは矛先を変え、夫に、ママさんに会ったことを話し、彼女はあなたを愛しているわけではない、いいかげんに目を覚ませと責めた。
「そうしたら夫が泣き出してしまった。やっぱり夫は彼女に惚れ込んでいたんですね。彼女のほうはちゃっかりお金をもらい、セックスの一度や二度はしたみたいですが、夫と恋愛関係を続ける気などさらさらなかった。それを全部話したら、夫は完全に落ち込んでしまいました」
その後、夫も現実を直視せざるを得なくなったようだ。表面上、家庭はうまくいっている。あのママが、本当に夫のことが好きではなかったのかどうか、とナナコさんはときどき考える。
「もしかしたら恋愛だったのかもしれないけど、彼女も現実を選択したんでしょう。万が一、店を続けられなくなったら大変だと思ったでしょうし。私は夫を許してはいませんけど、相手があのママさんでよかったのかもしれない。そんな気がしています」
もっとタチの悪い女性にひっかかっていたら、夫はもっとぼろぼろになっていたかもしれない。
それにしても妻にバレて、妻が相手の女性に会いにいくなど、夫たちはどう思っているのだろうか。妻には知られないようにするという最低限の覚悟もなく、不倫に足を踏み入れているようにしか思えない。
0 件のコメント:
コメントを投稿