「コロナ下の葬式」で遺族が苦労する5つの問題
東洋経済オンライン
今回のような緊急状況下で、家族や大切な人の葬儀を行う際、どんな問題に直面するのか。葬儀社に勤務する立場から、国や火葬場の通達に基づいて解説します。
また記事後半では、コロナウイルスで亡くなった場合でなくても、この時期に葬儀に主催したり、参加したりする際の注意事項も併せて解説します。
遺族はどんな問題に直面するのか?
1.死後に故人と面会できない
平時に病院で家族が亡くなった場合、葬儀社が迎えに来るまで、遺体は病室か霊安室に安置されることが多いです。しかしコロナウイルスで亡くなった場合、感染を防ぐため遺体は非透過性納体袋にすぐ収められます。非透過性納体袋とは、遺体を収めるための巨大サイズのジップロックのようなもので、それで密封された後、棺に納められるわけです。つまり、たとえ肉親であっても、故人に触れることはおろか死に顔を見ることさえできません。
2.葬儀を開催できない
感染リスクを考えると、通常の葬儀を行うのは困難です。宗教儀式は後日行うにしても、まずは火葬するということになります。
3.すぐ火葬しなければいけない可能性がある
通常は亡くなってから24時間以内の火葬は認められていません。その理由は、今と比べて死亡判定の精度が低かった時代に、故人の蘇生の可能性を考慮したからだと言われています。しかし特定の伝染病の場合は、感染防止目的で24時間以内の火葬が認められています。ペストやエボラ出血熱などがその対象で、現在はコロナウイルスも同じ扱いとなっているため、亡くなったその日に火葬ということもありえます。
4.火葬場と火葬する時間が制限される
とはいえ実際には、当日の火葬は難しいかもしれません。なぜならコロナウイルスの遺体は、都市部の場合、特定の火葬場が特定の火葬時間でしか引き受けていないからです。少し遠方の火葬場へ出向く可能性もあります。火葬時間は、感染リスクを配慮して、16時過ぎなどの一番遅い時間しか認められていません。立ち会う火葬場のスタッフも防護服を着ています。火葬炉前で立ち会う遺族の人数も数名に制限されます。前述したようにここでも最後の面会はできません。
5.依頼を引き受けてくれる葬儀社が見つからない
遺族は、この一連の業務を引き受けてくれる葬儀社を見つけるのにも苦労します。数日前、私の職場にも、ある大きな病院で家族を亡くした遺族の方から「故人がコロナウイルスかもしれないが、葬儀を引き受けてもらえないか」と問い合わせがありました。葬儀社が抱える複雑な事情
大きな病院は霊安室の業務を委託するため葬儀社と業務契約を行っています。その病院も、契約している葬儀社があったはず。にもかかわらず遺族が外部の会社に問い合わせをしたということは、契約葬儀社がこの依頼を引き受けなかったということでしょう(ちなみに検査の結果、故人は陰性だったそうです)。葬儀社が依頼を断るのは決して恐怖や自己保身といった単純な理由からではありません。ちゃんとした葬儀社のスタッフは衛生管理や遺体保全に関する教育を受けており、正しい知識に基づいて遺体を「適切に処置する」術を熟知しています。
葬祭業は肉体的にハードな仕事なので若いスタッフが多いです。たとえ自分が、万一コロナウイルスに感染しても、軽症か無症状である可能性が高いことも知っています。遺族が困っているなら多少のリスクを取っても役に立ちたいと考える葬儀社やスタッフもいるはずです。
しかし、現状のいちばんの問題は職業柄、コロナウイルスの死亡率が高いと言われている「高齢者のお客様と接する機会が多いこと」です。
先日も愛媛県で行われた葬儀で集団感染が発生したと報道されました。葬儀を通じてさまざまな人たちと関わる人間が感染源になるわけにはいかないため、依頼を断らざるをえない状況なのです。葬儀に参加する際の「3つの注意」
さて、ここからは故人がコロナウイルスではないが、この時期に葬儀に参加する方に向けて「3つの注意事項」を解説します。
注意1.高齢者の参列は控える
前述したように葬儀場で感染するケースがありました。症状が悪化しやすい高齢者の方はできるだけ葬儀の参加を控えたほうがいいでしょう。
注意2.通夜料理は出さない
通夜の参列者が多い関東圏は、大皿のビュッフェ形式で料理を振る舞う習慣があります。感染を防ぐために、通夜料理もやめておいたほうがいいでしょう。
注意3.マスクを外さない
葬儀に参列する際にマスクを外さないのは無作法と考えている方もいるようです。平時はそうかもしれませんが、今は緊急事態です。挨拶する際や、焼香する際にマスクを着けていても無作法にはあたりません。まだまだ予断を許さない状況です。大切な人を失った遺族の負担が少しでも減るよう、この騒動が少しでも早く収束することを願います。
0 件のコメント:
コメントを投稿