長く生きないと得られない「3つの特権」…ある日、突然の「気づき」
◆…関西医大名誉教授 中井吉英…◆
社会が複雑化し、ストレスであふれた現代。先の見えないコロナ禍も重なり、今後は心身の調子を崩す人がじわじわと増えることが予想される。ストレスが背景にある病気は、検査で異常が見つからないことも多く、診断と治療が難しい。日本心療内科学会の前理事長で、関西医大名誉教授の中井吉英さんに、体と心を分けずに診る心身医学の神髄を尋ねた。(編集委員 山口博弥)
ベッドサイドで手を握る。体をさする。大人もそれで安心します
心療内科医になって50年がたちました。でも、いまだに心療内科は多くの人に誤解されています。
精神科は、統合失調症やうつ病、不安症などの精神疾患が対象。神経内科は、パーキンソン病や脳梗塞 など脳神経系の病気を診ます。
一方、心療内科は、「体と心を分けずに診療する内科」です。主に心理社会的なストレスの影響で、体に不調が表れたり、もともとあった病気の症状が悪化したりした身体疾患(心身症)を診る「心身医学」を、内科の領域で実践します。心療内科医は名前の通り、内科医なのです。
1995年の阪神大震災の時、避難所の体育館に70代の男性がいました。被災後に血圧が高くなり、降圧剤を飲んでも上の血圧が180から全然下がらない。話を聴くと、地震で家が倒壊し、親友が目の前で亡くなった。その場面が何度もフラッシュバックとして現れ、1か月間、ほとんど眠れなかったといいます。私は彼の脈を診ながら手を握り、じっくりと話に耳を傾けました。その後に睡眠薬を処方すると、男性はぐっすり眠れるようになり、血圧も120台にまで下がりました。
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