病院の収入減 コロナによる経営悪化を防げ
感染症の治療にあたる医療機関が経営危機に陥っている状況は放置できない。政府は効果的な支援を急ぐべきだ。
新型コロナウイルスの流行が長引き、病院の経営悪化が続いている。日本病院会などが今年4~6月の収支を調査したところ、コロナ感染患者を受け入れた全国の約450病院は、各月とも8割以上が赤字だった。
院内感染の心配から、患者が受診を控えたことが影響した。また、病院は感染者の入院に備えて病床を空けておく必要があり、その分の診療報酬が入らなかった。消毒や防護具の経費も膨らんだ。
コロナ治療に積極的に取り組む病院ほど、運営が厳しくなる悪循環が生じている。こうした現状を改善しなければ、今後の感染拡大には対応できまい。
調査によれば、コロナ対応病院の23%が夏のボーナスを減額せざるを得なかったと回答した。最前線の医師や看護師らにしわ寄せが及んでいるのは見過ごせない。
医療現場では、感染防止対策や入退院の準備などで通常以上の労力がかかっている。病院経営者は、医療従事者の離職につながらないよう配慮することが大事だ。
政府や自治体は病院に対し、コロナ対応の病床を確保するよう求めている。病院が経営悪化を恐れて、協力をためらうような事態は避けなければならない。
問題なのは、国が創設した緊急包括支援交付金1・6兆円の支給手続きが進んでいないことだ。都道府県が指定する重点医療機関に対して、空き病床の確保料として、1床につき1日最大約30万円を補助するのが支援の柱である。
政府は8月下旬の支給開始を予定しているが、指定の遅れなどにより、25都道府県でめどが立っていないという。医療機関との調整や手続きを急いでほしい。
病院の負担を減らすには、都道府県が軽症者用の宿泊施設を確保することも重要となる。
経営悪化は小規模な医療機関にも及んでいる。日本医師会によると、診療所の5月の収入は前年同月比で2割のマイナスだった。
受診抑制が行き過ぎれば、慢性疾患が悪化したり、重い病気を見逃したりする懸念がある。コロナ以外の病気に対しても滞りなく医療が提供できるよう、自治体によるきめ細かい目配りが大切だ。
コロナ禍の中で、感染症対応と通常の診療を両立させる医療体制の構築が不可欠である。政府は、自治体や医療機関との連携をさらに強化してもらいたい。
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