2020年8月8日土曜日

 

新型コロナウイルス感染症への対応について記者会見する西村康稔経済再生担当相=7日午後、東京都千代田区© 時事通信 提供 新型コロナウイルス感染症への対応について記者会見する西村康稔経済再生担当相=7日午後、東京都千代田区

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が感染状況をステージ1~4に分類するための指標をまとめた。悪化具合に応じ、より強力な対策にレベルを引き上げていく仕組みだ。ただ、指標ごとに示した数値はあくまで「目安」の位置付け。経済的な打撃の大きい緊急事態宣言の再発令を嫌う首相官邸の意向を反映し、政治判断の余地を大きく残す緩やかな基準となった。

 「ステージ4の数値に当てはまれば直ちに緊急事態宣言をやるかどうか、それはその時の状況次第だ」。西村康稔経済再生担当相は7日の分科会後の記者会見で、指標を満たしても宣言を再発令するとは限らないと念押しした。

 分科会は先月31日、感染状況を4段階に分類し、それぞれに応じて対策を打つよう提言した。本来はそれに合わせ、国や自治体が現状についてどの段階にあるか見極める指標と数値を発表したい考えだったが、先送りにした。社会・経済活動を段階的に拡大していきたい官邸が、数値で判断を縛られることに抵抗したためだ。

 1週間遅れで発表にこぎ着けた数値自体も、骨抜きになった印象が否めない。

 例えば、緊急事態宣言再発令の検討が求められるステージ4の判断基準の一つは「10万人当たりの1週間の新規感染者25人以上」。しかし、4月の宣言発令時の基準が「5人以上」、5月の解除時の基準が「0.5人以下」だったことを考えれば、再発令のハードルが一気に上がったのは明らかだ。

 しかも、分科会が公表した見解は「指標をもって機械的に判断するのではなく、総合的に判断する」と明記した。経済活動の再開を推し進めてきた官邸幹部は「数値なんて単なる参考だ」と言い切った。

 全国の自治体の対応を左右する大きな政策変更にもかかわらず、今回、新型コロナ対策の特別措置法に基づく基本的対処方針は改定されなかった。対処方針を変えるには政府対策本部を開かねばならないが、その場合、安倍晋三首相の記者会見を要求する声が強まるのは確実だ。政府内では「首相が会見を嫌がったから改定しなかったのではないか」(厚生労働省幹部)との見方が出ている。 

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