7月14日 よみうり寸評
東北の北上川流域に「白髭 水」の伝承が残る。大洪水が迫る前、白髭の翁 が水上に現れるとされる◆中部の木曽三川流域に伝わるのは「やろか水」である。真夜中、淵の辺りからしきりに「遣 ろうか遣ろうか」と声がする。村人の一人が返事をしたら、たちまち大水が押し寄せて一帯をのみこんだという◆翁にたとえられる波頭も、怪しい水声も、〈民衆が編み出した知恵のひとつ〉と民俗学者の畑中章宏さんが『天災と日本人』に書く。先人は怪異現象に仮託して水害の猛威と早い避難の大切さを語り継いできた◆再拡大しているコロナ禍と相まって気が滅入 るばかりの長雨である。いつまでつづくのか、きょうも河川が氾濫し、土砂崩れも起きている。これまで被害が出ていない地域も油断できない。先人の知恵にも学び、危急時の行動を今一度確かめて豪雨に備えねばなるまい◆晴れぬ気分が少しは変わるだろうか。大相撲7月場所の開催が決まった。名古屋ならぬ両国国技館に久々の熱気が戻る頃、梅雨も明けるといい。
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