2020年7月14日火曜日


         娘が残した いつもの朝

2020/07/13 15:00

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京アニ放火1年
 午前7時、テレビの電源がひとりでに入った。
朝を迎えた石田奈央美さんの部屋。電源が入ったテレビは、窓からの光とともに柔らかく室内を照らした。窓辺にはケースに入った500色の色鉛筆が飾られている。母親は、月曜から土曜まで決まった時間につくテレビに、奈央美さんが目覚ましにしていたと気づいたという(4日、京都市伏見区で)
朝を迎えた石田奈央美さんの部屋。電源が入ったテレビは、窓からの光とともに柔らかく室内を照らした。窓辺にはケースに入った500色の色鉛筆が飾られている。母親は、月曜から土曜まで決まった時間につくテレビに、奈央美さんが目覚ましにしていたと気づいたという(4日、京都市伏見区で)
 京都アニメーション放火殺人事件で犠牲になった石田奈央美さん(当時49歳)の部屋。「涼宮すずみやハルヒの憂鬱ゆううつ」などで「色彩設計」を担当した。タイマーがセットされているテレビは、主のいなくなった今も、朝の訪れを告げている。
 目覚まし代わりに使っていたのだろう。母親(79)は、テレビの音に「今頃起きていたんやな」と思う。セットされているタイマーに、娘の気配を感じる。あの日の朝、いつも通り見送った後ろ姿が忘れられない。赤い弁当箱も持っていた。「今も悲しい。もう死ぬまでこんな気持ちやと思います」
 プロ養成塾の講師もつとめていた渡邊わたなべ美希子さん(当時35歳)の母親は、事件後、「娘を感じていたい」とポスターや絵を、家中に飾るようになった。幼い頃から絵が好きだった。絵の道に進むことは反対していたが、大学卒業後、その強い意志を尊重し、背中を押すことにした。「人が傷つけあわない優しい世界になってほしい」と願う。
 「聖地」と呼ばれる作品にちなんだ場所。「けいおん!」の舞台とされる豊郷小学校旧校舎群(滋賀県豊郷町)や「氷菓」ゆかりの喫茶店「バグパイプ」(岐阜県高山市)では、黒板やノートに、訪れたファンが思いをつづる。6月22日の日付で、「氷菓」に寄せられたメッセージにこう書かれていた。「悲しい思い出を刻むことになってしまった事件ですが作品の輝きは永遠です」
 36人が犠牲になった事件から、18日で1年を迎える。(写真と文 浜井孝幸)
渡邊美希子さんの両親宅には、玄関や階段などいたるところに絵やポスターが飾られている。年賀状用に、と美希子さんが描いたイラスト(左)や、美術監督をつとめた「境界の彼方(かなた)」など作品のポスター(右)が並ぶ(6月22日)
渡邊美希子さんの両親宅には、玄関や階段などいたるところに絵やポスターが飾られている。年賀状用に、と美希子さんが描いたイラスト(左)や、美術監督をつとめた「境界の彼方(かなた)」など作品のポスター(右)が並ぶ(6月22日)
警察から遺品として渡された弁当箱は、きれいな状態だった。昨年の5月、奈央美さんと一緒に買いに行った。奈央美さんが子供の頃から続いた、母親の弁当作りは、突然終わりを迎えた(6月29日)
警察から遺品として渡された弁当箱は、きれいな状態だった。昨年の5月、奈央美さんと一緒に買いに行った。奈央美さんが子供の頃から続いた、母親の弁当作りは、突然終わりを迎えた(6月29日)
「氷菓」に登場するとされる喫茶店「バグパイプ」。中国など海外からもファンが訪れる。「これからもたくさんの人に愛される作品を」。交流ノートには、メッセージや、イラストがつづられている(5日、岐阜県高山市で)
「氷菓」に登場するとされる喫茶店「バグパイプ」。中国など海外からもファンが訪れる。「これからもたくさんの人に愛される作品を」。交流ノートには、メッセージや、イラストがつづられている(5日、岐阜県高山市で)
豊郷小学校旧校舎群の黒板には、ファンのメッセージが並ぶ。福岡県から訪れた20代の男性は、「1年は、早いですね。悲惨な事件でした。京アニはあたたかい作品が多く、作っている方もきっといい人たちだったんだと思います」と話した(2日、滋賀県豊郷町で)
豊郷小学校旧校舎群の黒板には、ファンのメッセージが並ぶ。福岡県から訪れた20代の男性は、「1年は、早いですね。悲惨な事件でした。京アニはあたたかい作品が多く、作っている方もきっといい人たちだったんだと思います」と話した(2日、滋賀県豊郷町で)

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