2020年7月14日火曜日

 熊本県南部を中心に深い爪痕を残した九州豪雨は、新型コロナウイルス対策の臨時休校が明けて間もない子供たちから再び学びの場を奪った。休校が長期化する3市町村の小中学校7校のうち同県球磨(くま)村では村内全3校で再開の見通しが立っていない。村立渡(わたり)小(児童78人)は1階が水没するなど施設被害が深刻で、大半の児童が村外避難を余儀なくされるなど先が見えない。
 「教育機能は壊滅している」。3月まで渡小の校長だった森佳寛・球磨村教育長は惨状に肩を落とした。
 渡小は入所者14人が亡くなった特別養護老人ホーム「千寿園」の隣にあり、水が引いた後、天井まで水につかった2階建て校舎の1階には泥だらけの椅子など備品が散乱していた。
 校舎は昨夏、四十数年ぶりの大規模改修で「奇麗になった」と子供たちが歓声を上げたばかりだったが、内装や壁紙も濁流にさらされ、入り口に通じる道は流木と土砂で塞がれた。
 村教委は村内の小学校2校と中学校1校の児童生徒全232人の無事を確認。一部の児童と避難所で再会した森教育長は「子供たちが『先生』と声を掛けてくれてほっとしたが、自宅が被災した子もいて親御さんに掛ける言葉がなかった」と沈痛な表情を浮かべた。
 子供たちの多くは13日までに村外に避難。福岡など県外にいるケースもあり、避難先の公立校で受け入れてもらう手続きを進める。
 学校は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う約3カ月の臨時休校を終え、6月に再開したばかりだった。更なる学習の遅れも懸念され、森教育長は「これからという時に……。何とか策を講じていく」と話した。
 被災した子供たちの心のケアも課題だ。渡小4年の氏川琥太郎(こたろう)さん(9)は自宅が高台にあるため浸水は免れたが「下から水が上がってきてドキドキした」と当時を振り返る。
 浸水で孤立していた住民が助け出されると明るく声を掛けて元気づけたが、翌日、避難所で友達と会うと初めてほっとした表情を見せたという。母マヤさん(47)は「不安や怖さがすごくあったんだと思う」と心中を案じる。【鈴木拓也、平塚裕介】

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