2020年7月14日火曜日

         7月13日 よみうり寸評

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 作家と実業家の二足の草鞋わらじを履いた水上滝太郎は、小説『銀座復興』で関東大震災からの復興に立ち上がろうとする人々を描いた。〈大東京の心臓が丸の内なら、銀座は胃のに違いない〉。話の舞台となる街を冒頭でそう定義している◆次いでこの胃袋の強健ぶりを記した。〈もろもろの多忙と退屈と繁昌はんじょうと不景気と文化とごまかしと悪徳と――雑多なものを平気で呑込のみこんで…〉◆今は銀座もだいぶ様子を変えたが、この記述に大阪の街のイメージを重ねる恐れがある店の利用自粛を呼びかけている◆心臓だけで世の中の生気は保てない。胃袋を守る方もいよう。飲食に娯楽…胃袋にたとえられる場所には訪れる人の需要に応える生業なりわいがある◆東京のコロナ感染者の数に目を奪われていたら、大阪でも日曜に32人の感染が判明、府は独自基準で「黄信号」をともした。感染経路不明者の数などが条件を満たしたという。府は感染のためにも東西で今一度、その状態を注視する時だろう。何しろコロナには滅法めっぽう弱い“臓器”である

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