2020年7月14日火曜日

若い人の聞こえ<5>難聴の予防 日頃から

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Q&A

1994年慶応大医学部卒。横浜市立市民病院耳鼻咽喉科副医長などを経て2004年から現職。聴覚センター長も務める。
1994年慶応大医学部卒。横浜市立市民病院耳鼻咽喉科副医長などを経て2004年から現職。聴覚センター長も務める。
 済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科 主任診療科長 新田清一さん
 難聴や耳鳴りなどに詳しい済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科主任診療科長の新田清一さんに、若い人の聞こえの問題について聞いた。
 ――若い人が難聴になることは多いのですか。
 「スマホが普及し、世界中で音楽を耳にする環境が生まれました。しかし、大きな音量に長時間さらされると聴覚が傷つく危険性は、十分知られていません。世界保健機関(WHO)は、世界で11億人の若者に難聴のリスクがあると警鐘を鳴らしています。今すぐでなくとも、20年、30年後に難聴になる恐れがあります」
 ――治療が難しい難聴もあるのですね。
 「聴覚に関わる神経や細胞は、一度損なわれると元に戻すのは困難です。片方の耳が突然詰まったようになる突発性難聴や、低い音だけが聞こえなくなる低音障害型感音難聴は、若い人にも多く見られます。放置すると治りにくくなるので、異変を感じたら早めに受診してください」
 ――聞こえが悪くなるとどんな影響がありますか。
 「人とのコミュニケーションが取りにくくなり、孤独やうつ状態に陥りやすくなります。中高年以上では、認知症になる率が高まるという研究もあります。個人にとっても経済にとっても大きな損失です」
 ――最近、聴覚情報処理障害(APD)が注目されています。
 「聴力に異常がなく、音は聞こえているのに、言葉として聞き取るのが難しい状態のことです。難聴や脳の病気、発達障害の可能性を考慮しつつ、診断する必要があり、対応できる病院や研究機関は限られます」
 ――原因や治療法は。
 「中枢神経の何らかの異常と考えられていますが、わからないことも多く、根本的な治療は難しい状況です。ただ、障害とわかることで、本人や家族が納得し、安心できることは大きいですね。周囲からの支援も受けやすくなります」
 ――支援とは。
 「例えば、雑音がある中で会話が難しい人に対しては、会議を別室で少人数で行う、教室の席を前方にする、話の内容を文字や図でも示す、といった『環境調整』が支援になります」
 「話し手の声が直接耳に届く送受信機を利用し、効果を上げている例もあります。聴覚補助に手軽に活用できる電子機器は、今後増えていくでしょう」
 ――耳の異変に気づくポイントや予防策は。
 「聞こえの問題は外部からはわからず、徐々に進む場合は、本人もなかなか気づかないことがあります。大音量で音楽を聞かない、耳を休ませる時間を作るなど、日頃から予防を心がけることが大切です」
 「日本耳鼻咽喉科学会では『Hear well,Enjoy life(快聴で人生を楽しく)』というサイトを作り、難聴についての情報をわかりやすく伝えています。予防のために活用してください」(小屋敷晶子)

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