人類が半年前に知ったばかりのウイルスは、世界の1千万人以上に感染し、50万人を超える犠牲者を出している。災禍はどう始まり、どう広がっていったのか。連載「コロナの時代」の新たなシリーズは「パンデミックの序章」。感染の拡大が始まった中国・武漢を歩き、謎のウイルスの存在を捉えるまでの道筋や、ヒトヒト感染の認定に二の足を踏んだ中国の初期対応を検証する。
中心部の大通りにも絶え間なく車が行き交うが、漢口駅近くの道の両側には約200メートルに及ぶ青いバリケードが残る。隙間からのぞく看板はほこりまみれで、その下に「魚」や「蟹(かに)」といった字が読み取れる。
半年前に閉鎖されるまで、ここに華南海鮮卸売市場があった。5万平方メートルの敷地に魚介、干物、食肉などを売る店が千軒以上ひしめく巨大市場だった。世界をのみこんだ新型コロナウイルスの最初の集団感染は、ここで発生した。
昨年12月31日、市当局は初めて「原因不明の肺炎患者が27人いる」と発表。その多くが市場の関係者だとした。リストを入手したという中国メディアは、一番早い発症は50代女性の12月11日だったと伝えていた。
新型ウイルスはどこから来たのか。最初の感染者だったかもしれないその女性を探した。
市場周辺の住民から市場で働い… 8日、武漢大学人民病院の呼吸内科副主任、余昌平(53)は、別々の地域に暮らす患者から共通の症状が出ていることに気づいた。
余は朝日新聞の取材に、「医師ならば誰もがヒトからヒトへの感染を疑う状況だった。私も心の中でそう思った」と証言する。
拡大するコロナの時代 パンデミックの序章㊤/デザイン・加藤啓太郎
年末のかきいれ時、喧騒の中の「異変」
湖北省武漢市の都市封鎖が解け、間もなく3カ月になる。魏、呉、蜀の三国時代をはじめ中国史の舞台となってきた長江中流域の1千万都市は、ようやく活気を取り戻そうとしている。中心部の大通りにも絶え間なく車が行き交うが、漢口駅近くの道の両側には約200メートルに及ぶ青いバリケードが残る。隙間からのぞく看板はほこりまみれで、その下に「魚」や「蟹(かに)」といった字が読み取れる。
拡大する看板から「華南海鮮卸売市場」の文字は消され、バリケードによる封鎖が続いている=2020年6月6日、中国・武漢市、平井良和撮影
昨年12月31日、市当局は初めて「原因不明の肺炎患者が27人いる」と発表。その多くが市場の関係者だとした。リストを入手したという中国メディアは、一番早い発症は50代女性の12月11日だったと伝えていた。
新型ウイルスはどこから来たのか。最初の感染者だったかもしれないその女性を探した。
「最初の感染者」を探して、記者は現場を訪ね歩きました。取材を進めると、どのように感染が広がっていったのか、少しずつわかってきました。
余は朝日新聞の取材に、「医師ならば誰もがヒトからヒトへの感染を疑う状況だった。私も心の中でそう思った」と証言する。
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