2020年7月18日土曜日

立憲民主党街頭演説での市井紗耶香('19年7月)© 週刊女性PRIME 立憲民主党街頭演説での市井紗耶香('19年7月)  元モーニング娘。のタレント、市井紗耶香が久々に注目を浴びている。7月14日、自身のツイッターで娘が学校から受けた頭髪指導に言及したからだ。

「#ブラック校則」は学校批判?

頭部と毛先の色にムラがあるから黒く染めてきてください
 と言われたことに対し「娘は地毛」だとして「これがブラック校則なのか」「過度に個人の尊厳を損なう行為はあまりに残念すぎる」と異議を申し立てた。
 これには賛同する声もあがったが「なんかSNSで圧力をかけている感じ」「こういう人がモンスターペアレントになるんだな」といった批判も目立つ。実際、有名人がこうした発言をすれば、学校が特定されて過剰な中傷につながるおそれもあり、不用意な行為と見なされても仕方ない。
 また、市井のお騒がせぶりは今に始まったことではない。それも今回の「炎上」につながっているわけだ。そんな彼女の歴史を振り返ってみよう。
 市井は14歳のとき、モー娘。の第2期メンバーとしてデビュー。当初はパッとしなかったが、第3期メンバー・後藤真希の教育係になったことで浮上した。『うたばん』(TBS系)で「かあさん」というあだ名をつけられるなどしていじられ、グループ内ユニット『プッチモニ』でも成功。人気を得たのである。
 しかし、デビューから2年後、突然の脱退。その理由は、
シンガーソングライターになりたい
 というものだった。が、モー娘。の作品は当時、基本的にすべてつんく♂が手がけており、彼女に作詞作曲の実績はない。ファンもメディアも首をひねり、じつは彼女の母親と事務所がギャラをめぐってもめたため、といった推測も囁かれ、一部週刊誌でも報道された。
 脱退から1年半後「絶対、戻ってきます」という宣言どおりに活動を再開させたものの、シンガーソングライターとしてではなかった。たいせい(シャ乱Q)のプロデュースでフォークの名曲をカバーしたアルバムを「市井紗耶香with中澤裕子」名義でリリース。その半年後には、たいせい、吉澤直樹と『市井紗耶香 in CUBIC-CROSS』を結成して『人生がもう始まってる』をリリースしたが、ヒットはしなかった。ちなみに、この作品の詞や曲も市井ではない。
 その翌年には、引退。それから4年間ほど地元のショッピングモールで働いていたことをのちに明かしている。そのあいだにバンド仲間だった吉澤とできちゃった結婚。ただ、夫婦生活は7年で終わり、離婚の翌年には美容師の男性と再婚した。
 とはいえ、二度の結婚で4児の母に。おかげで、ママタレとしての活動が可能になった。しかし、辻希美のようによくも悪くも若さにあふれ、夫も有名人なケースに比べると、地味な印象は否めない。

再起をかけた挑戦の行方

30歳のときには「大人AKBオーディション」に挑戦して落選したり『有吉反省会』(日本テレビ系)の企画でお風呂業界のアイドルグループ・OFR48に合格して活動したり。また、モー娘。脱退の真相として「恋愛もしたいし、普通の生活もしてみたい」というのが本音だったと明かすなどしたが、大きな話題にはならなかった。
 そんな市井が大勝負をかけたのが、昨年、35歳で出馬した参院選だ。その3年前の参院選では、今井絵理子(元SPEED)が当選。二匹目のどじょうもあるかと思われたが、次点で落選した。現在、ツイッターのプロフィールでは「政治家」ならぬ「活動家」を名乗っている。
 ただ、彼女の姿はある意味、モー娘。世代以降の元アイドルにはありがちなものだ。その特徴はまず「公私混同」。これが大量のママタレ化現象につながった。
 市井の場合はブレイク時に母親が「スナック紗耶香」をオープンさせたり、自身も脱退後の休業期間に、当時芸能人だったゴマキの弟との交際が噂されたりしたものだ。
 そして、もうひとつの特徴が「身の程知らず」である。これは一世を風靡した人気グループのその他大勢組が陥りやすいパターン。「グループの人気=自分の人気」という思い込みから、ソロになってもそのままいけると錯覚してしまう。一方、メディアも世間も「元モー娘。」ということでそれなりには注目するので、本人もなかなか目が覚めないわけだ。
 今回、市井がとった行動は、娘の学校への不満を公の場でぶちまけ、世間に同意を求めるというもの。まさに「公私混同」と「身の程知らず」というふたつの勘違いが結びついたことによる炎上といえる。
 なお、ツイッターでは擁護的な意見を引用ツイートして、こんなコメントをした。
皆さんからいただいたメッセージも ひとつひとつ丁寧に拾い上げ 今後の活動に活かして参ります
 まるで国会議員だが、政治家としての実績はゼロに近いし、そもそも、最初の数年間以外はタレントとしての実績もほとんどない。そういう意味では「炎上ママタレ」ですらなく、ただの「炎上ママ」なのかもしれない。 
PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。

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