2020年8月31日月曜日

8月版「コロナ禍で売れた商品」トップ10© 東洋経済オンライン 8月版「コロナ禍で売れた商品」トップ10  酷暑のさなかもマスクが生活必需品になる――。ほんの半年前まで誰も想像しなかった事態だが、新型コロナウイルスが引き続き猛威を振るう中、店頭の売れ筋商品も例年の夏場からは一変している。

市場調査会社のインテージが、新型コロナの影響を受ける前の今年1月6日週から週次で、全国約4000店のスーパー、コンビニ、ドラッグストア、ディスカウントショップなどの販売動向を追っている「新型肺炎カテゴリー動向」。
 季節が春から夏、そして夏から秋に移ろうとしている中で、コロナ時代の“3種の神器”ともいえる商品が、驚異的な売り上げの伸びを示している。

マスクは前年比1000%超え

3種の神器の筆頭格といえば、やはり「マスク」だ。直近のインフルエンザの流行が昨年12月上旬だったことから、今年1月中旬は前年同期の8割程度で推移していたが、1月20日週に突如200%を突破。翌週には667%に達したが、2月に入ると品薄状態となり、3月9日週には前年比80.6%まで落ち込んだ。
 その後も需要に供給が追いつかず、前年同期比で200%を超えたのは4月20日週。徐々に正規の商流での供給が追いつき、街角で売られている粗悪品の値崩れが始まると、スーパーやドラッグストアでの販売金額はうなぎ上りとなり、緊急事態宣言が解除された5月25日週に700%を超えた。
 一気に1000%、つまり前年同期の10倍の大台に乗ったのは6月29日週。7月27日週には、ついに1800%を突破した。その主たる原因は、例年なら大きく需要が落ち込む夏場にも、高水準の需要が続いているからだ。
 ただ、このような前年同期比で伸び率が大きくなる“カラクリ”を抜いた実額ベースで見ても、驚くべき水準に達している。「2019年のマスクの需要のピークは1月21日週だったが、そのときの販売金額と比較してもほぼ2倍」(インテージの渡邉満・市場調査アナリスト)というのだ。
 ユニクロをはじめ、アパレルメーカーやスポーツ用品大手などが相次いで布マスクを発売し、それらが広く普及してもなお、例年のピーク時の倍売れているということになる。
 「非接触形式体温計」も、7月27日週に1000%の大台に乗った。
 消耗品のマスクと違い、一度買えば済む体温計は、店頭から蒸発した時期がマスクよりも1カ月遅い3月中旬だったが、供給が戻った5月以降は250~260%前後で推移。7月に入って300%台に乗った。
 マスクの1000%という数字を見てしまうと、感覚がマヒするためか、どうしても見劣りするが、客観的に見れば、前年同期比で200%を超える状態が何カ月も継続しているというのは異常事態だ。
 だが、体温計のうち非接触形式のものだけ切り出すと、体温計全体とはまったく異なる動きが見て取れる。
 まず、店頭から商品が蒸発する直前の2月24日週に1213.1%を記録。その後は商品供給が追いつかず、5月下旬ごろまで150~280%前後を行ったり来たりしていたが、6月に入って600%台にハネ上がった。
 7月13日週には937.8%に上昇。7月27日週に、ついに1000%の大台に乗った。「非接触形式の体温計の2019年のピークは、マスクよりも1週間前の1月14日週だったが、このときと比較しても565%」(前出の渡邉アナリスト)。
 7月に入って感染者の急増が伝えられるようになると、飲食店が営業を再開した6月上旬ごろとは異なり、入店時に検温される機会が俄然増えたと感じている人は少なくないはずだ。
 図書館など公共施設を利用する際にもほぼ100%入り口で検温されるし、リモートワークを継続しながら緊急事態宣言時よりは出社率を上げた企業も、事業所単位で社員の出社時に検温を実施している。
 こういった需要に応えているのが、事業所周辺のドラッグストアなのだろう。もっとも、非接触型も一度買えば済むので、需要の盛り上がりは早晩落ち着くはずだ。

手指消毒剤は2000%を突破

マスクや非接触形式体温計以上の伸びを見せているのが「手指消毒剤」である。
 傷口の消毒剤なども含めた「殺菌消毒剤」全体の伸びも7月以降400%台に乗るなど、依然高水準で推移しているが、伸びを大きく牽引しているのが手指消毒剤だ。
 マスクよりも若干早めに供給が追いついたこともあり、前年同期比で1000%を突破したのは4月13日週。例年なら需要が減り出す5月下旬ごろから伸び幅が大きくなり、7月20日週に2000%に到達した。つまり、例年の夏の20倍売れているのだ。
 インテージによれば、2019年のピークはマスクと同じ1月21日週で、その時点と比較しても357%だという。例年のピーク時と比べても、その3.5倍売れていることになる。
 検温は計り手がいることが前提だが、手指消毒剤は今や世の中の至る所に設置されていて、基本はセルフ。手軽かつ供給が追いついているので、高水準の伸びはまだ当分続くだろう。
 これら“新型コロナ時代の3種の神器”の間に、急激に割って入ってきたのが「うがい薬」だ。
 長らく100%台で推移していたものが、8月3日週に1096%と急伸。日次ベースでは8月4日に5089%という驚異的な伸びを示し、6日以降も400%前後と前年同期に比べて高い水準が続いている。
 理由は、ご存じのとおり、吉村洋文・大阪府知事が8月4日に緊急会見を開き、「うがい薬の成分『ポビドンヨード』で新型コロナウイルス感染症の治療効果が期待できることを確認した」と力説したためだ。
 会見直後から、ドラッグストアにうがい薬を買い求める人が殺到。1カ月近くが経った現在も品薄が続いている。
 購入者の属性の変化も興味深い。うがい薬の購入者を、直近1年間の購入の有無によって継続と新規に分けてみると、7月27日週までは新規ユーザーが20~30%で推移していたが、8月3日週には59%まで増加した。
 ほかにも、前年同期比の伸び率は200%に届かない水準なので、“3種の神器”に比べると見劣りするが、「ぬれティッシュ」も除菌・抗菌・アルコール系が例年のピーク(秋の行楽シーズン)の2.5倍売れている。
 個人が外出時に持ち歩く需要もさることながら、ドアノブや手すり、アクリルボードなどをこまめに拭く事業所単位の需要を、周辺のドラッグストアやスーパーが支えているとみられる。

企業業績にも影響を与えるニューノーマル

ニューノーマルは企業業績にも大きく影響を与えている。同じ化粧品・トイレタリー業界に身を置きながら、メイク用品中心の資生堂は2020年上半期(1~6月期)の営業損益が34億円の赤字と、前年同期の689億円の黒字から724億円悪化した。
 だが、花王は同じ時期の営業損益は前年同期比13.8%減で乗り切ることができた。化粧品は大きく落ち込んだが、巣ごもり特需で衣料用洗剤や台所用洗剤が大きく伸びたほか、業務用のハンドジェルが爆発的に売れたことが寄与した。
 ウィズコロナ時代の必需品は、消費者が選別する段階に入っている。ニーズをタイムリーかつ適格にとらえるヒット商品が、業界の勢力図を塗り替える可能性もあるだろう。

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