2020年8月31日月曜日


 電気自動車(EV)の競争が本格化してきた。世界では市場が急拡大しつつあり、官民挙げて取り組みを急ぐべきだ。ホンダは、小型車「Honda e」を10月下旬に国内で発売すると発表した。ホンダのEV量産は初めてとなる。
 他の日本メーカーも続き、2010年発売の「リーフ」で先行してきた日産自動車は来年、スポーツ用多目的車(SUV)の「アリア」を投入するという。トヨタ自動車は高級車で、マツダはSUVタイプで参入する予定だ。
 19年の世界のEV市場は167万台と新車販売の2%だが、4年で5倍に増えた。35年に20%近くになるとの予測がある。各社が力を入れるのは、妥当である。
 問題なのは、これまでも走行中に二酸化炭素(CO2)を出さないEVの販売増を目指しながら、国内では伸びていないことだ。
 政府は4年前、EVと家庭で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)の保有台数を、20年に計100万台にする目標を掲げた。現状はその3分の1程度とみられる。その間に、世界では導入促進の動きが加速している。
 欧州は、今年から自動車の環境規制を強化し、CO2の排出量が基準より多い場合は、メーカーに罰金を科すことになった。
 ドイツやフランスは、コロナ禍に苦しむ経済を環境重視で活性化する方針も打ち出し、EV購入時の補助金の増額、充電器の整備などを行っている。
 最大市場の中国は、「新エネルギー車」購入への補助制度で販売を伸ばしてきた。
 ガソリン車より割高なため、日本も政策的に後押しすることが望ましい。国が最大40万円程度の補助金を出すが、最大100万円前後の欧州と比べて少ない。拡充を検討すべきではないか。
 充電1回で続けて走れる距離はガソリン車より短く、充電に時間がかかる。こうした技術的課題の克服に向けた支援も考えたい。
 自動車は日本の基幹産業だが、EVでは劣勢にある。19年の世界の販売は米テスラが1位で、2位以下も中国勢が目立っている。
 自動車産業は裾野が広い。当面はガソリン車の優位が続いたとしても、将来的には部品メーカーの構造転換を含めて対応を進めなければ、雇用にも打撃が及ぼう。
 次世代車には水素で走る燃料電池車(FCV)もあり、どちらに軸足を置くのか政府の方針は定まらない。世界の動向を見据え、具体的な戦略を示してほしい。

0 件のコメント:

コメントを投稿