[スキャナー]細田・麻生派動向カギ…自民総裁選 無派閥・菅氏 支援欠かせず
安倍首相の後継を選ぶ自民党総裁選で、菅官房長官が出馬に向けて動き出した。無派閥の菅氏が勝利するには、細田、麻生両派の動向がカギを握る。ポスト安倍の筆頭候補と目されてきた岸田政調会長は焦りを強めている。(政治部 工藤淳、谷川広二郎)岸田氏、巻き返しに躍起
■二階派が先陣
「安倍政権の色々な懸案事項を菅氏がすべて承知している。政権の継承も含めて、しっかりやってほしい」
30日夕、二階幹事長との会談を終えた二階派会長代行の河村建夫元官房長官は、菅氏が出馬した場合には支援する考えを明言した。二階派が菅氏支援で先陣を切った格好で、党内では「『菅総裁』の流れを作ろうとする二階氏の戦略だ」(閣僚経験者)との見方が広がった。菅氏は7年8か月にわたって政権中枢で安倍首相を支えた。首相の突然の辞任による緊急登板でも、「安定的に政権運営を引き継ぐことができる」(党幹部)として、党内には待望論があった。
菅氏は30日、表だった動きを控え、自身に近い議員と電話で党内情勢などについて意見を交わした。無派閥の菅氏にとって、党内の支持基盤は「菅系」と目される無派閥約30人だけだ。総裁選で勝つには派閥単位で支援を受けることが不可欠で、29日に二階氏に出馬の意向をいち早く伝えたのも、そうした事情が背景にある。
■党議員の4割
首相の出身母体で党内最大派閥の細田派と、第2派閥の麻生派は党所属国会議員の4割近くを占める。両派が菅氏の支援を決めれば、二階派と菅氏を支援する無派閥グループを合わせ、230人規模となる。党執行部は、総裁選を党大会に代わる両院議員総会で行う方向で、総裁選出に必要な過半数268票に迫る。
ベテラン議員は「二階、細田、麻生の3派が菅支持を決めれば、他派閥や無所属議員も雪崩を打つ」と指摘する。
ただ、細田、麻生両派がすんなり菅氏支援でまとまるかは不透明だ。細田派内では下村博文選挙対策委員長らが出馬に意欲を示しており、麻生派でも河野防衛相が出馬を模索している。新総裁の任期は来年9月まで。菅氏に近い無派閥議員は「まずは来年9月までの暫定政権という位置付けで、党内から幅広い支援を得ていく」と語る。
■最悪のパターン
一方、岸田派幹部は30日、菅氏が出馬の意向を固めたことについて「一番最悪のパターンだ。かなり厳しくなった」と語った。岸田氏はこの日、昼に宿舎を出ると、細田派の細田博之元幹事長、同派に影響力を持つ森喜朗元首相、麻生派の麻生副総理兼財務相、鈴木総務会長と相次いで個別に会談した。
首相の政権運営を支え続けた岸田氏は、来年9月の総裁任期満了で後継者の指名を受ける戦略を描いてきた。しかし、首相は退陣を表明した28日の記者会見で後継者を明言しなかった。岸田氏について、最近では「発信力が課題だ」と不満を口にしている。
岸田派は30日夜、幹部が急きょ集まり、対応について協議した。岸田氏は「これまで通りやっていくしかない」と周囲に漏らした。
「党員投票」若手100人賛同
自民党執行部は総裁選について、国会議員と都道府県連の代表者による投票で行う方針だが、党内では党員投票の実施を求める声が上がっている。
総裁選は、議員票と、それと同数の党員票で行うのが原則だ。ただ、党則では「特に緊急を要するとき」は党員投票は行わず、議員票と各都道府県連の代表者各3人による投票で決められるとしている。
過去には2007年に安倍首相、08年に福田首相が任期途中で辞任した際、この規定が適用された。党執行部は今回、新型コロナウイルス対応を抱える中、一刻も早く新総裁を決める必要があるとの立場だ。世耕弘成参院幹事長は30日のNHK番組で、「一日も早く次の総理を決める必要がある」と強調した。
これに対し、小林史明青年局長と歴代の青年局長らは、党員投票実施を求めた署名活動を行っている。細田派や岸田派の若手を中心に100人程度が賛同しており、31日に執行部に申し入れる予定だ。青年局長経験者の小泉環境相は30日、「党員の声を反映する機会を作るべきだ。新総裁が政策を推進する上で、必ず後押しとなる」と語った。
党員投票が省略されれば、議員票でほぼ勝敗が決するため、「派閥の論理で、密室で総裁が決まった印象がつきまとう」(ベテラン)。地方人気は高いものの党内基盤の弱い石破茂・元幹事長は、党員票を軸にした戦略を練っており、「石破氏を総裁にしないために党員投票をしなかったと見られれば、世論の反発を買う」(中堅)との懸念もある。
ただ、党員投票を実施するには、党員名簿の精査のほか、投票用紙の準備などの事務作業が伴い、「1か月近くはかかる」(党職員)という。新型コロナの感染拡大が続く中、本格的な総裁選の実施は困難との見方もある。
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