2020年8月31日月曜日

新型コロナの影響で都心部の百貨店は打撃を受けた(5月、閑散とする東京・銀座)© NIKKEI STYLE 新型コロナの影響で都心部の百貨店は打撃を受けた(5月、閑散とする東京・銀座) 新型コロナの影響で、個人消費が大きく変わったと聞くわね。全体としては厳しい状況の中でも好調な企業もあるらしいけど、どんな要因なの。今後私たちの生活様式も変わるのかな――。「ウィズコロナの消費」について、田中陽編集委員が金子理奈さんと新井陽子さんに解説した。
――消費行動はどう変わりましたか。
スーパーやコンビニエンスストアでは現金のやり取りを減らそうとキャッシュレス決済が増えています。ファミリーマートは3~5月期に同決済の比率が3割と、前年同期の2割から拡大しました。またサイゼリヤは7月からメニュー価格の端数(9円)をやめて50円単位にしました。客も店も1円や10円の出し入れをなくすことで、精算時間が3割も減ったそうです。
日経POS情報によると、第1波が襲い始めた2~3月は畜肉缶詰、水、即席袋めんといった買いだめ需要が急激に増えました。一方、緊急事態宣言が出た4~5月はケーキ・パン材料、生クリーム、お好み焼き粉などのプレミックスのような、自宅で子どもたちと一緒に料理を楽しむ商品が人気となりました。
また5月から3カ月連続で伸び率トップはアルコール濃度の高いスピリッツでした。当初は手指の消毒液の代替としての購入でしたが、7月には家飲み用の商品が人気でした。買い物の頻度は減る一方で、1回当たりの購入金額は1~2割増えています。
――売り上げが落ち込んでいる分野は。
ファッション性の高い衣料品は一部の企業を除き不振ですね。外出する機会が減ったほか、商業施設が営業を見合わせたためです。欧米も同じで、有名百貨店やアパレル専門店の破綻が相次いでいます。マスク人気の陰で口紅などの化粧品も苦戦気味です。移動制限の直撃を受けたのが航空会社、ホテルです。
本来楽しい時間を過ごすはずの外食産業も窮地です。日本フードサービス協会によると、レストラン業態の6月の売上高は前年比43%減、居酒屋は58%減でした。
――同じ業態でも明暗があるのですか。
外食産業は宅配やテークアウトに活路を見いだそうとしています。昨秋の消費税増税後も、店外では軽減税率対象なのも追い風です。日本マクドナルドの4~6月期の既存店売上高は前年比6%増、客単価は32%増と好調でした。
巣ごもり需要を上手に取り込んで業績を向上させたのが「宅急便」を手掛けるヤマトホールディングスです。4~6月期決算の営業利益は99億円と、前年同期の61億円の赤字から急回復しました。7月の取扱個数も同8%増と好調を維持しています。
コンビニはコロナ前まで営業成績が良好だった都心部、駅前立地、観光地が芳しくない一方、住宅立地が盛り返しています。ここ数年、インバウンド(訪日外国人)需要が旺盛だったドラッグストアも同様の傾向です。テレワークの拡大で「ユニクロ」のように部屋着、カジュアル衣料に強いアパレルも一時期の落ち込みから回復しています。

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