2020年8月25日火曜日

コロナ感染対策でマスクを着けて動かなければならないので、この暑さも二重に響きます(撮影:今井 康一、8月上旬に東京都内で撮影)© 東洋経済オンライン コロナ感染対策でマスクを着けて動かなければならないので、この暑さも二重に響きます(撮影:今井 康一、8月上旬に東京都内で撮影)  長かった梅雨から一転、8月に入ってからは猛暑に見舞われている日本列島。

8月17日に浜松(静岡県)では41.1℃、日本の最高気温ランキング1位タイの気温を観測しました。
 今年はなぜこれほど急激に暑くなったのでしょうか。また、この先の残暑はどうなりそうでしょうか。

記録的な猛暑

8月11日には、伊勢崎(群馬県)、桐生(群馬県)、鳩山(埼玉県)で、今年全国で初めて40℃を超えました。
 8月17日に浜松で、最高気温41.1℃を観測しました。2年前、2018年7月23日に熊谷(埼玉県)で観測された、日本の最高気温ランキングの1位と並ぶ記録的な高温です。
 (外部配信先では図や表などを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
 浜松は、前日の8月16日も最高気温が40℃を超えており、2日連続の40℃超えでした。同日は天竜(静岡県)で40.9℃を観測し、ランキングの6位に入っています。
 また、気温は日陰で観測しています。直射日光の下では5℃くらい高く、アスファルトの照り返しがあればさらに高くなるおそれがあります。
 今年7月から関東甲信で運用が始まった「熱中症警戒アラート」は、1シーズンに7日間くらいの発表を見込んでいたそうですが、東京では8月10日から18日は9日連続。8月22日までで、すでに12日間も発表されています。
 東京都監察医務院によると、東京では8月1日から22日までの熱中症による死者が170人にのぼり、8月の熱中症死亡者数が過去最多になりました。これまでは、昨年2019年の115人が最多でしたが、今年は約3週間でそれを大きく上回っています。

マスク着用や外出自粛が熱中症リスクを高めている

亡くなった方の8割以上がエアコンを設置していなかったか、もしくは使用していませんでした。また、新型コロナウイルス感染症の対策のためにマスクを着用していることや外出自粛による筋力低下が熱中症のリスクを高めていることも考えられます。
<猛暑の原因① PJパターンで急激な暑さに>
「PJ(太平洋-日本)パターン」というのは、台風が発生することが多い南シナ海からフィリピン付近の海域で対流活動が活発になって積乱雲が多くできると、日本付近に太平洋高気圧が張り出すという相関関係のことをいいます。
 7月は「負のPJパターン」で対流活動が不活発で台風の発生数は史上初のゼロに。また、太平洋高気圧が日本付近に張り出さなかったため、梅雨前線が長く日本付近に停滞していました。
 ところが、8月に入ると一転「PJパターン」になりました。台風が次々に発生し、日本付近に太平洋高気圧が張り出したことが、急激に暑くなった原因の1つです。
 850hPaの気温を見ると、日本は暖色で上空の気温が平年より高いことがわかります。特に、東日本や西日本では21℃以上で「W(=warm)」の表記もあり、かなり高くなりました。太平洋高気圧に覆われて、空気が暖められたのです。
<猛暑の原因② チベット高気圧>
浜松で41.1℃を観測した8月17日を含む5日間を平均した上空の状況を見てみましょう。
 500hPaの8月16日から20日を平均した北半球の様子で、地図の中央下に日本があります。数字が大きいところが高度が高く、気温も高い場所です。
 東北から西日本を覆っている5880メートルの等高度線が、太平洋高気圧の目安です。
 そして、その内側にもう1つ円があります。これは5940メートルの等高度線で、太平洋高気圧よりもさらに上空にある「チベット高気圧」が日本付近に張り出していることを表しています。
 2つの高気圧が重なっている付近は濃いオレンジ色になっていて、特に平年よりも高度が高い、すなわち気温が高くなっていることがわかります。
 お布団が2枚重ねになっているような状況で、日本付近は暖め続けられました。上空から暑い空気に覆われているために熱の逃げ場がなく暑さは蓄積され、最高気温だけでなく最低気温も高い状態が続き、大阪や京都は高い最低気温の観測史上1位を更新しました。
<猛暑の原因③ 風の影響>
40℃超えというのは、記録的な高温です。
 それを突破した地点では、ダブル高気圧に加えて、熱風が吹いたことによって気温が上昇したと考えられます。
 風による気温上昇でよく取り上げられるのが「フェーン現象」です。
 標高2000メートルの山で想定すると、風上(左側)では25℃だった空気が、風下(右側)では33℃。風上より風下のほうが空気が暑くなっています。乾いた空気は湿った空気よりも高度による気温の変化が大きいため、風下は山越えした暑い空気が流れ込みます。
 2007年に更新されるまで長年、日本の最高気温ランキング1位だった1933年7月25日の山形40.8℃もフェーン現象の影響でした。
 山の風下に暑い空気が流れ込むので、関東では北西風、日本海側は南風でフェーン現象が発生することが多いです。
 どんな風が吹くのかは、気圧配置によります。
 41.1℃を浜松で観測した8月17日の天気図を振り返ってみましょう。
 太平洋高気圧の中心は九州付近で、浜松がある静岡県はその東側に位置しています。高気圧中心は風が弱く、熱風が吹きやすいのはその周辺です。特に、太平洋高気圧の東側は気温が上がりやすいとされ、この日の浜松には西寄りの風が吹いて愛知県や岐阜県から暑い空気が流れ込みました。

暑さの鍵を握る台風のコース

台風の進むコースによっても、猛暑になるかわかります。
 台風4号は、8月1日に南シナ海で発生し、今年初めて日本に接近しました。
 日本列島を避けるように大回りして朝鮮半島方面に進むこの経路が、典型的な猛暑コースです。
 日本付近に張り出していた強い太平洋高気圧を迂回するようにこのコースを辿りましたが、台風と太平洋高気圧はお互いを強め合う関係があるため、このあと太平洋高気圧がさらに強まって日本に猛暑をもたらしました。
 8月22日に発生した、台風8号の進路図です。
 沖縄に接近した後、朝鮮半島方面に進む見込みです。
 台風4号と似たコースが予想されていて、台風との相関関係で太平洋高気圧が強まるため、この先も非常に暑くなる可能性があります。まもなく9月ですが、厳しい残暑を覚悟したほうが良さそうです。

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